気がついたらファンタジー世界でモブ幼女?鍬から始める農民生活、生き残り

和紗かをる

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8章アーベ砦の戦い、モブ幼女大活躍・・・しません。

8-1

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先ほどまでの、真っ暗な夜空の端が紅色に染め上げられ、その幻想的な光景に目を奪われている間に、夜は終わり、朝と共に、色々な足音を立てて、それはやってきた。
一瞬、ウイルズ・アインの大群が迫ってきたのかな、とかびくびくしてしまったけど、やってきたのは様々な動物たちだった。見た目で判るのは熊みたいなのとか、鳶みたいな鳥さん達。見慣れたスヒァーも数匹見える。
「なんなの、この動物大行進みたいなのは?」
「ダルマジロが呼びかけて集めているみたいだよ、森に住む動物たちを守るために声をかけたんだって、どうもダルマジロに言わせると、今回のウイルズ・アインの行動は謎だらけで、しかもこの森をずっと昔から守ってきたブクスフィの守りを突破するのは異常なんだって」
武器作りのために、せっせと私の元に枯れ枝を運び、加工された武器を分配するユルヘン。彼も夜明けに叩き起こされてからずっと仕事をしている。
「そうなんだ、ブクスフィってそんなに強かったんだね、私にはただの古い木にしか見えなかったよ」
「何言ってるの、ブクスフィは妖精女王と同格の森の精霊だよ?一本一本の枝が槍みたいに伸びて、相手を突き刺すんだから!」
「ユルヘン、見たことあるの?」
「な、ないよ、アーべ叔父さんに昨日聞いた話・・・」
 な~んだ聞いただけか~。つい数日前までユルヘンはスヒァーを飼う家の牧童だったんだから、森の精霊の事は童話でくらいしか知らなかった筈。中級農家の役立たずちゃんだったハルも知っているはずがない。
 ブレフトとジローは当たり前の様に知っているだろうし、聞いたら、そんな普通の事も知らないのかよ?とかブレフトに自慢げに言われてしまう、それは嫌だ。
 会話をしながらもせっせと枯れ木を武器に加工する。
 一番多いのは太目の矢。これなら熊だって一撃だよって位の太さの矢で、先端に金属があればまんま博物館でみた矢なんだけど、残念ながら彫刻ナイフの魔法はそこまで万能ではなく、木は形は違ったも木にしうか変化しない。なので矢の先端は鋭く尖ってはいるが金属は使用していない。相手が魔物とは言え、鎧を着込んでいるわけじゃないから、これでも十分な効果があるとは思う。
 弓の方は大人が十人くらいで引くのかって位大きな物を作ったけど、使い方を聞く前にアーべ叔父さんが持っていってしまった。
 次に作ったのは木の盾だ。これは非難?してきた大型の動物たちにも使えるように皮ベルトをつけたりと、私以外の加工も必要で、そんなに多くは作れていない。
腕に巻いて固定するための皮ベルトの材料が少ないのも理由だ。
そして槍。これはこのアーベ砦にいるすべての人に配れる位作った。ブレフトが荷物運びの傍ら言っていたけど、どうやらこの槍は手に持って戦うだけでなく、罠にも使うみたいで、もっともっと数を作る必要があるみたい。
 とにかく明け方からアーべ砦は大騒ぎで、森中から避難してくる動物、亜人種が後を絶たず、中では私が続々と枯れ木を武器に加工して、それをユルヘン、ブレフト、アーべ叔父さんが各所の分配配置をしていく。
一気に人数が増えたせいで、ヘイチェルさんを筆頭に炊き出し部隊が複数結成され、狭くなってきた砦の中で炊事を始める。
ジローは避難してくる動物達、亜人達をずっと話し込んでおり、なにやら難しい話をしていてこっちに全然寄ってこない。
 歴史博物館の戦国時代のジオラマで、どっかの合戦がラジコンみたいなので再現されていたのを、ふと思い出す。今の私たちの状態を遥かな頭上から見たら、あんな感じなのかな?
でも、ろーじょーせん?ってのはかなり悲惨なことになるって説明書きに書いてあった。人と動物が集まって、罠を作って、大きな壁も作って、武器も揃えるって言うのはその、そーじょーせんって奴になるんじゃないかな?
 あれ?これって戦争?戦争なの?
「ジロー!ジロー!ちょっと、ジロー!話があるんだけど~!」
 一回頭の中に戦争と言う文字が浮かんだら、ずっと思考の中心に居座って離れてくれない。私が教わった勉強では戦争は悪いこと、意味の無い事、無駄な物、人にとっての害悪として教えられてきた。戦争をするのは悪い人。大事な人を傷つけ、傷ついて、一面焼け野原しか残らない。全部が全部そうじゃないって動画で言う人はいたけど、本当かどうかなんか、戦争体験なんて知らない私には判らなかった。
ただただ、戦争は怖い物としか、判らなかった。
「なんだ、どうしたハルカゼ、我は打合せで忙しいのだ、雑多な種族が集まったせいで、どう展開するのかきまらんでな」
「ジロー!ジロー!私たちって戦争をするの?戦争しなきゃいけないの?」
 自分で言っていて少しヒステリックになっていたかもしれない。ちょっとジローの顔が引きつっているのが判る。髭の動きもどこと無く固い。
「なんだ今更、攻めてきているのはウイルズ。アインだぞ、我はブクスフィとの約束に基づいて、この森を守り、兎人の集落を守り、ハルカゼのホラント村を守るために思案していると言うのに、今更か、ハルカゼ?」
「今更・・・そっか、気づいていなかった私がいけなかったんだね、そうだよね、変なのが無理に侵入してきて喧嘩を起こして、ブクスフィを傷つけてこのままじゃヘイチェルさんの集落の人たちも、ユルヘンの家族の牧場も襲われるかもしれないんだよね、だから戦わなきゃいけないんだ・・・」
「そうだな、ハルカゼが何を考えているか知らんが、襲われたら守る、当たり前の事だ、目の前にナイフを持った男が家族に刃を向けていたならば、その手に持つ弓矢で射殺すしかない、妖精女王のおかげでこのあたりはほかと比べて平和であったが、それでもこれはここの常識だぞ」
 それはたぶん、満員電車で痴漢の腕をぐっと握って、この人痴漢ですっ!て叫ぶのと似ている。ってかそれくらいしか思いつかない。警察24時の世界。よく動画で切り抜きを見ていた。万引き犯とか、痴漢が捕まる所。被害者が勇気を出して訴えて初めて犯罪が減ったという話。それはよく判る。悪いことをしている人に対抗するのは悪じゃない。むしろ正義って話。
「でも、なんか気分悪いなぁ、なんでだろう?」
 判らない。理屈とか考え方とか、小難しい話では乏しいながらも、なんとなく判るし、私だって痴漢されたら、その手を掴んでやり返してやる!とは思う。
 でも、言葉じゃない、どっか奥のほうで、何かが気持ち悪いって感じてしまっている。なんだろう?
「気分も何も、すぐにやつらは来る、戦いが始まったらハルカゼは役に立たんし、むしろ邪魔だ、親のところにでも行くが良い」
 本当に忙しかったのだろう。ジローはそう言うと、くるりと向きを変えて様々な種族が集まった動物会議に戻っていった。きつい言い方だけど、邪魔になるのは本当だろうし、自信もある。それにくるりと向きを変える瞬間、ジローの二股に分かれた尻尾が頭を撫でる様に掠めていったのは偶然じゃないだろう。
照れ屋なのか判らないけど、あれがジローの優しさなんだと思う。
そんな優しさを見せられて私は言い返すことができなかった。なんとなくの気持ち悪さとか、そんなふわっとしたものだけで、何か言って困らせるだけのワガママ娘は嫌だ。間違いなら間違い、感情だけじゃなく、代替案を提示するべきって、新人社員のはじめかたって動画にもあった。嫌だ嫌だだけじゃなく、どうすれば良いのかを考えなければ何でも反対の人になっちゃうって。
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