くず異世界勇者~こんなくそ世界でも勇者してやるよ~

和紗かをる

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第1章 勇者の始まり 初クエスト

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あれからどれくらいたっただろうか。
 下腹部の衝動は、もはや我慢と言う堤防の存在を忘れて開放に次ぐ解放に、いささか飽きてもいるぐらいの時。つまり垂れ流し状態でいた時。
 姉姫様は一回来ただけで、再訪問は無い。
 普通なら婚約者のお漏らしを目の前で見せられたら、百年の恋も冷めるだろう。
 だが、あの姉姫様であれば、むしろご褒美として受け取っていたかもしれない。
 真正だからな。
 もう、いいや。恥とかどうでもいい。
 それよりも、いつまで俺はこの場所で貼り付け状態になっているんだろうか。 
 勇者のスキルのせいで、この状態で長く放置されていたとしても死ぬことはないと思う。 
 ってちょっと待て。もしかしたらこれからずっとこの状態のまま?
 死ぬ事も出来ず、手首足首に痛みを抱えながらずっととか、拷問ですよねぇ。
 そんなの法律違反ってか人権無視過ぎやしませんか?
 あ~、なんでこうなった。
 思い出せば死刑を免れ、勇者とか言われた後、城に連れ去られ肉まんちゃんとの婚約を強制的に決められ、だがそれは勇者の務めを果たしてからだとか、王冠かぶっていた偉そうな爺様に偉そうに言われたっけな。
 旅の準備として結構な額の金貨も渡された。その金貨は実は俺が所属していた盗賊団の隠し金庫にしまってあったものだが、まぁ金に貴賤は無いとも言うしな。
 ありがたく貰って、さらに旅の仲間を紹介された。
 一人目、筋骨隆々の茶髪な王国戦士。前衛職で多分三十前後。盾を持たずに両手持ちの剣を操る偉丈夫と言った所か。
 二人目は異世界色バリバリのエルフの少女?幼女?ありがちな緑色を基調とした服装に白金色の髪を背中まで垂らす美人さん。エルフで美女とは当たり前すぎだが、その当たり前が大好きだぞ俺は。薄い胸と十代前半に見える容姿も愛でる価値ありだ。実年齢が俺より年上とかなら、さらにありだ。
背負った弓は象牙ででも出来ているような白で、金色でツタの様な紋様が装飾されている。
 五十メートル離れた場所から、突進してくる猪も撃退できるぐらいの技量らしい。
 三人目。来ました。これも異世界ありありの、魔法少女。
 濃い茶色のローブを目深にかぶり、大きな杖を持っている。顔は良く見えないが髪の毛は綺麗な藍色。後で知ることになるが瞳はサファイアの輝き。
 身長はエルフ女と同じくらい。ちっこい系二人目で、少女枠二人目だ。
 次が四人目。ごつい槍を持った聖騎士。なにやら大神官っぽい爺様の血族で、長く国と教会に仕えた真面目さんらしい、以上。
 えっと、何?男性の紹介が簡単すぎるって、当たり前じゃん。男だよ?俺も男だし、BL要素は皆無でOK?
 興味がなければ最低限でいいよねぇ。
 そして最後が本命。
 偉そうな王冠かぶっている爺様と本当に血族かと疑いたくなるような絶世の美女。エルフ少女が少女枠最強の顔ならば、最後のこの妹姫様は女性枠最強の顔だった。
 しかも、齢は14歳。ええか、もう一回言うぞ14歳だ。
 世界が違えば、決まり事も常識も性癖さえも変わる?
 こっちの世界では14歳は成人一歩手前。15歳で成人が普通だ。
 しかも王族であれば10歳に満たない年齢で政略結婚とか、出産もありらしい。
 天国かよ?
 いや、俺はね、別に幼女趣味とかそういうのではないのだよ。別に色っぺ~姉さんとかも大好物なわけよ。
 そこで引く男は、信られん。男なら基準は、可愛いか美人でしかないだろう。
 そこに年齢問題を出してくるほうが、女性と言う美に対して失礼でしかない。
 んでまぁ、姉姫様はこの時点では俺の前には出てきていない。妹姫様は回復系魔術師というか、神官的な立ち位置と、世界を巡る勇者に付き添う事で、各国の利害調整役もやるらしい。
 さすが王族。大変そうだな。
 そんなメンバーでいざ旅へ。
 となるはずだったが、俺はその日の夜に衝撃の事実にぶち当たり、数日は寝たきりと言うか引きこもり化した。
 なんでだって?
 そんなの決まっている、姉姫様とその夜遭遇してしまったからだ。
 最初に見た時は、もうなんかね妹姫様と血のつながり云々以前に、種族が一緒なのか疑いのまなざしを向けたよ本当。いきなり寝室に凸されたから、魔物の襲撃かと思ったじゃないか。
 出会いがしらにそんな感じだったので、とりあえずベッドの脇に置いてあった箪笥に、盗賊団直伝のロープ術でしばりつけてからの会話となった。
 なんで椅子に縛り付ける王道パターンじゃなかったかについては、彼女の重みで破壊された木の椅子が物語っている・・・。本当に人類か?
 さて、そんなこんなでファーストコンタクト。縛られてなんか、はぁあぁとか息を荒くして頬まで紅潮させている姉姫様は、正真正銘の俺の婚約者に指名されている姉姫様だった!ガーン。
 あ、あの、妹姫様になんかほとんど全部の要素を奪われる呪いでも受けました?
「あ、あの、あの、勇者様が来て、それで、なんか、知らないうちに、婚約者とか何とか言われて、恥ずかしくて部屋から出ないでいたら、王の命令だとかで部屋から追い出されて、仕方なくここに・・・」
 あの王冠爺様め、余計な事を。俺にけしかけるなら、確実に妹姫様の方だろうがっ。そうすれば勇者って手駒を得られたはずなのに。うん、もう、王冠爺様の事なんか知らない。
「あ、そう、で?」
「え?で、って、あの、言われても」
 ちなみに姉姫様は見た目はあれだけど、声だけは今まで見てきたアニメの中の人達に負けない、可愛らしいボイスをお持ちだった。
 目さえ閉じていれば、儚げで可愛らしい、守ってあげたくなる要素で出来ていそうな少女の幻影が見えるくらいに。
「部屋から王命で追い出されたから、今夜は帰る場所がない、引きこもり生活が長すぎて頼れる友達も居ない、家臣にお願いするにも王命を盾に拒否されるって事か~」
 俺の言葉に、風がうなりを上げるくらいの風圧で頭を上下させる姉姫様。表面積が多いと首を上下に振るだけで扇風機並みの風が起こるのを俺は初めて知った。
 しかしあの王冠爺様の奴、婚約だか結婚だかは勇者の務めを果たしてからとか、勿体ぶったこと言ってなかったか?
 会って間もない男に、お願いだから姉姫様を貰ってくれって懇願していたら、旨く行かない以上に、警戒されるからわざとそう言ったのか?
 その上で逃げられない様に既成事実を作っちまえば、その結果は勇者様一名確保!になるって計算か。さすが一国を預かる王冠を偉そうにかぶった爺様。絶対に!真似したくはないけどな。
「あの、それで、私はどうすれば・・・」
「あ~もうどうでもいいよ、好きにしてればいいんじゃない、どうせ俺は明日にはここ出ていくからさ」
「まぁっ、そんな、せっかく会えましたのに・・・」
切なそうな美声を発する姉姫様。想像してほしい、深夜、豪華な館の豪華な部屋の中に居るのは適齢な男女が二人きり。片方は疲れた様子でベットに座り、もう片方、肝心なヒロイン枠の女性は箪笥を背中にしてロープでぐるぐる巻きにされ、身をよじりながら、頬を紅潮させている姿を。
 しかもその体積比は2倍から3倍近い。
 これって、放置していたらそのうち箪笥引きずって俺にダイブとかしてこないだろうな。
「いいからっ、とにかくおとなしく朝までこの部屋に居れば、明日には自分の部屋に帰ればいいじゃん、別に俺は何もしないし」
「いいですか、それで・・・」
「ああ、構わない、好きにすればいいって言ってるだろ」
 あ、あれ、なんだろう?
 勇者スキルの警戒センサーに何かが引っ掛かった様な・・・。
 まっでも、さっきまで縛り首とか言われてた身の上だし、昨晩は牢獄でよく眠れずに寝不足気味なんで、大人しく寝てれば、何も問題ないだろう・・・。
 そう思って俺は眠りについたわけなんだが、朝は・・・。俺に朝は来たのだろうか・・・?
  次の日だと思う。とにかく目が覚めて起きてみると、部屋の中は野獣が暴れまくってましたって位に荒らされており、俺は全裸でベッドの上で大の字に横たわっていた。
 妙に力が入らない体は、なんか汗とは違う成分のべたつきに覆われ、野獣のザラザラした舌で舐めまわされていた様な感じだ。
「あ~早く、お風呂入りたい」
 ベッドから降りて、脱ぎ散らかされた自分の衣服を拾っている時に、意識がだんだんと覚醒してきた。
 最後の記憶から、今の記憶の間に何があったのかを思い出し、い、いや、思い出しそうになったが、ぎりぎりで踏みとどまった。
 人類には忘れる、と言う特殊スキルが常備されているじゃないか。
 うんうん、覚えていたからって全部が全部役に立つ事ばかりじゃない。
 「風呂入って、すべてを洗い流そう・・・」
 なんか、頬に無意識の涙が伝うが、もう忘れた。忘れたんだから関係ないんだ。何も覚えていないのだから・・・。だが、そんな呪文の様な思いとは裏腹に、体と精神の深いところの傷は一朝一夕では治らず、俺はそこから数日引きこもりとなった。見目麗しいエルフアーチャーや、魔女っ娘幼女が迎えに来てもベッドの上から一歩も動かず、夜に怯えながら・・・。
 最終的には廃人化している俺を、槍の聖騎士おっさんが担ぎ上げて無理やりに運び出したとさ。
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