くず異世界勇者~こんなくそ世界でも勇者してやるよ~

和紗かをる

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第11章 クライマックスへの序曲なんてきいたことがねぇ。えぇまったく記憶にございませんってか

11-1

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増援でやってきた魔女の警戒部隊を同じように蹴散らし、今度はうまく一人だけ意識を飛ばさないように確保。気絶している魔女たちの命を人質に取る形で脅して会議場まで突っ込んでみた。
 やり方が完全に勇者ではなくて魔王のそれだったが、そんな事を気にしてはいられない。大体呪いときいて俺はピンと来ていたんだ。
 姉姫様の知識と勇者スキルさんの80%の力でもって現在進行形で体の中に抑え込んでいる呪いの原因が、こいつらにあるかもしれないってな。
 呪いという物の出所が、魔王か教皇庁か魔女に分類されるのならば、王国と組んで一番利益がある相手は誰だ?魔王はまずもってありえない。
 そうなると魔女か教皇庁かになるわけだが、俺も、教皇庁にとって不倶戴天の敵である巫女姫様も教皇庁側からの呪いを受けていなかった。もちろん彼女には教皇庁が持っていた呪いの知識は効果がないが、勇者である俺ならば効果があるとして使った可能性は無いとは言えない。
だが、だ、それならば魔法少女を手中に収めていた王国戦士と、その頃は仲良しこよしだった妹姫が結託して魔女を動かす方が、話は早いのではないだろうか?
 つまり魔女は推定有罪だ。前の世界なら推定有罪は無罪と一緒だが、こちらでは違う。
 推定有罪は犯人と一緒って事で、力で打倒してもいい。うん、そう俺が、世界の勇者様がたった今決めた。
 そう決めて、偉そうに円座になって話し合いをしていた婆の首根っこを摑まえて、気持ちよく遠心力付きで感動の再会場面を演じてやったんだが。
 なんと残りの魔女婆ども、何を血迷ってか即座に攻撃術式を構築し始めやがった。速さも正確性も一級品なそれは、以前の俺ならばいざ知らず、今の俺が直撃を受けたら痛い。  
 痛いで済むかどうかは受けてみなければわからないが、当たれば痛いと判っているものに態々当たる馬鹿はいない。
 そうなると、取れる方法は人間の盾・・・いや魔女の盾だ。
 首根っこ掴んで振り回していた魔女を盾にして攻撃術式を打ち落とす。 
 掴まれた魔女の方でも、痛いのは嫌なのか自分の周りに必死で術式障壁を展開したので、いや~相手の攻撃術式を打ち落とすのが楽で楽しかった。これって遊園地になんか置いたら稼げるかな? いや、打ち落とす棒の役目をする魔女に支払う人件費が高そうだから無理か・・・。
 ってそんないいところに懐かしい顔が2つ現れた。
 1つは監禁されていた場所で、あろうことか勇者様を水責めして、こっちのが泣きたいのに泣きそうな顔で決別の宣言を吐いて去った魔法少女。最後に見た時から2年近く経過しているのに、相変わらず身長もちっこければ、胸もちっこい。これならば少女になりたて姉姫様のが将来性を加味しなくても大きい。
 まぁでも魔法少女よ、それはそれで好きな人はいるからあきらめるな?
 おっきな兄さん達からは引く手あまただし、それはそれで1つの恋愛ものとしてジャンルになるから俺は気にしないぞ。
 そしてもう1つ。あいつは俺が兄王子の城を攻略する直前に姿を消した槍の聖騎士。
 くそが突くほどの真面目キャラで、冗談が通じない時があって面倒くさかった。
 悪と見れば即座に突き刺すような、ある種江戸末期の剣各集団にいてもおかしくない奴だ。悪即串刺し・・・うん、語呂が悪いな。
 宝蔵院とかに知り合いがいるんじゃないかって位の槍馬鹿で、それ以外の能力は皆無だった気がする。確か妹姫が食材の買い出しをお願いしたら、何故か奴隷の少年を狩ってきたような奴だ。因みに言い訳を試しに聞いてみたけど、その時は不当な売買が行われていたからだったか?奴隷を売る奴隷商人が少年を売るのに際してその都市の条例を破っていたkらだとか何とか・・・。本当にこいつはそういう所がある。木を見て森を見ないと言うか何と言うか、奴隷売買自体は法で認められているからありと考え、そこに疑問を持たない変な奴だった。
 ちなみにその奴隷売買で利権を得ていた都市は、俺の我儘で奴隷も奴隷以外も分け隔てなく都市を失って流浪の民となったのは言うまでもない。
 アフターケアとして、姫巫女に事前にお願いしてあったので、もしかしたら先日までいた都市に、滅ぼされた都市の生き残りもいたかもしれないな。だがそんな事はどうでもいい。
 今はこいつだ。
「それで?やるってのか聖騎士様よ、ここは俺が引くって選択肢はないぜ、こいつらには聞きたいことが山ほどあるんだ、邪魔はしないでくれるか?」
「ん?なんだ勇者、お前はこの魔女たちに話を聞きたいだけなのか?殺したいわけでも、傷つけたいわけでもなくただ仲良くなるために話したいだけと言う事か?」
 なんだろう、それって要約すると俺がこの魔女婆どもをナンパしているみたいじゃないかよ。だが大まかに言って間違ってはいない。
「ああ、俺はこいつらがなんだか仕掛けて来るんで相手しただけで、話さえきけりゃそれでいいんだ、傷つけるとか殺すかどうかとかは俺は考えてもいねぇ、姉姫様はどう考えているかわからんし、エルフの事を聞いたらお前がどうするかも知らんがな」
 姉姫様からの話だと、確かにこいつらがエルフに直接無いかしたわけじゃない。しかしあの時に俺がもし万全の柚須はスキルが使えたら、エルフを簡単に死なす事は無かったんだ。遠因とはいえこいつらは俺の中で有罪でしかない。だが、その腹いせにこいつら全員ぶっ殺しても、俺の中では何も変わらない、だから殺したりせず使える者は使うと言うだけだ。
「そっか、なら私たちが敵対する理由も無いな、これ以上魔女たちに乱暴狼藉を働かないと言うのならば私が間を取り持ってやろう、失礼ながら勇者は少しと言うかすごく人との交渉が下手だからな、なんでか君に交渉を任せると最初っから喧嘩腰になるのは知っている」
「うるせい、じゃあそこらへんはお前に任せるとして、細かい話ははめんどうくせぇから、姉姫様とお前で話し合ってくれ、その方が交渉はうまくいくんだろう?」
「ああ、任された、ニトもそれでいいね」
 魔法少女がコクンと頷く。
 あっれっ~この魔法少女の反応は、もしかして王国戦士にこっぴどく振られて落ち込んでいるのかと思いきや、もうすぐに次のターゲットを見つけてたのかよ。
 可愛い顔して魔法少女は肉食系か?姉姫様の弟子なのか?
 だが、こいつがそっちの系統も行ける口だったとは知らなかったぜ。
「ニトもそれでいい様だ、では、そちらは本当に姉姫様なのか?随分とまぁ見た目も重さも様変わりしたようだけど」
「詳しいことは直接言え、面倒だから俺は離れて待っててやるから、急げよ?」
「そんな、勇者様わたくし1人で交渉をするのですか?一緒には居てくださらないのでしょうか?」
「しおらしい振りすんな、ここまで脅しておいて、さらに聖騎士様まで協力してくれるってんだ、こんな交渉お前なら楽勝もいいところだろう?それとも、そんな事も出来ないのか?」
「いいえ~ぐへへ、勇者様にそんな言葉をいただけたのなら、粉骨砕身交渉させていただきますわ、お任せくださいませ」
 いつも通りな微妙な気持ち悪さがあるが、姉姫様はこんなものだと思って手荷物化していた婆様を降ろしてその場を離れようとすると魔法少女がついて来た。
「なんだよ?二度と会いたくなかったんじゃなかったか?」
「うるさいです、勇者を放置しておくと何するかわからないです、誰か見張っていないと・・・」
「ああ、すかご苦労な事だな、さっきも言ったけど俺はまだこの郷と敵対したいわけじゃないからな、知りたい情報が得られればいいだけだ」
「あやしいです、勇者はそう言っていっつもめちゃくちゃな事ばかりしてたです」
「はいはい、信用ねぇな、まっ勝手にしとけや、何もしないからよ」
 俺は正規のルートでこの場所に上ってこれる階段に腰かけて遠距離の探知を実施する。
 魔女の郷の中は人がこの場所を中心に、魔女たちが右往左往していたり先ほどぶっ飛ばした魔女たちが救助されたりしているのが判る。彼女らの口から俺がここに居るのはすぐにバレルだろう、そうしたら大挙して魔女が攻め込んでくるかもしれないが、その前に話が終わると良いな。この場所は槍の聖騎士のお陰で話し合いという空気になっているが、外から中途半端に状況を知った魔女がやってくると、またぞろ争いになってしまう。
 魔法少女が説明してくれれば争いにはならないかもしれないが、こいつに説明とか出来るのか?非常に不安だ。
「ねぇ、エルフって何があったんです?」
「あぁ?お前知らないのか」
「知らないです、だって勇者洗ってすぐに城を追い出されたです、そこからはあちこち寄り道しながら帰ってきたばかりです・・・」
 2年間と言う時間をただ寄り道の一言で表現する魔法少女。王城から郷まで道さえ知っていれば半年もかからない。浮いた時間で何をしていたのやら。
「俺も姉姫様に聞いただけだが、あいつは死んだよ・・・、殺されたらしい」
「えっ殺されたって、誰にです?」
 ここで、今までの俺なら、そんなの決まっているお前が慕っていた王国戦士とその一味だよと答えていただろう。だが、なんの仏心かそれを言うのは憚られた。エルフはこの魔法少女を可愛がっていたし、王国戦士となし崩し的に深い仲になるのを邪魔しても居た
 そんなエルフの気づかいを思えば、こと此処に至って、態々魔法少女を苦しめるだけの言葉は言う必要がないのかもしれない。ふとそう思ったんだ。
「さあてな、王国内でクーデター騒ぎがあって、その混乱の中での事らしい、まっそれも姉姫様の見間違いで、実はひょっこり生きてるかもしれねぇがな・・・」
 そうであれば、どれだけいいか。
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