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鶯音を入る
第五十九夜
しおりを挟む「そんな事、ないんじゃない? アタシは翠の着てる服、可愛いと思う。……けど、自分で着るって発想にならないし。お洒落で良いなって思うけど、多分、翠が着るから可愛く見えてるだけ。服だけ見たら、多分、そこまで」
「そうだったんですか? 似合いそうですけどね。紅さん、顔の整い方半端ないですし、何着ても似合うと思います。……でも、今日日全身ペアルックとか、男女のカップルでもしないか。全体的にふわっと似せるか、一点だけお揃いのアイテム使うとか、その位ですよね。皆、人の目気にしすぎ……って、私が言えた事じゃないですね」
彼女のお陰で表情筋は残業を免れ、口角が自然に上がったのは良いが、ブランド関係者が聞いたら激昂してもおかしくない物言いは、曲がりなりにも芸事に携わる人として如何なものか。
(私は好きだけど、紅さんのそういう所も。電波にも乗ってなければ、誰に聞かれてる訳でもないし、私の前でだけ言える事みたい…………ってだけじゃなくて。服はsageられたけど、私はageられて――……。すごく自然に『可愛い』って言われちゃった。オーバーに褒められるより、紅さんくらいナチュラルに会話に混ぜ込んで来られる方が、私は嬉しいんだ。私、まだまだ自分の事知らないのかも。意外と)
「…………入るのあれば、全身同じの着たいけど」
引っ張られた気がして隣を向くと、案の定、彼女が袖を掴んでいた。
「生地、しっかりしてる。……着て、伸ばして、大きくなる……とかは、期待出来なさそう」
(ギャップ萌えの体現…………)
やはり私は、時折――いや、結構な頻度で――顔を出す彼女の少女性にも惹かれているのだと思う。
「……本気ですか?」
両手が塞がれている程、危険な状態はない。隙を見て、高性能な日傘を奪った。
「お世辞、言うトコじゃないし。翠は?」
「…………アリ、かもしれません。全身オソロ。……ってなると、懸念点はサイズが違いすぎるって事だけですかね? 日本ってサイズ展開狭いし、キモいおっさん達が『オレが考えた女』のイメージに則って服作らせてるせいで、肩幅も胸もない人のための服ばっか余ってますよね。本当、意味不明です。生身の女と接触した事ないんですか? そんなの入るの、ごく一部のモデル体型の人と、ありえない位細身に作られたマネキンだけですけど? ……って、よく思います。だから、紅さんはもう体型について自虐するのやめてください。勿論、体型以外の自虐もする必要ないですけど。……とにかく! 悪いのは紅さんじゃないんで。現実に即したサイズ展開をしない企業や業界側に問題があります。私も背高い方ですし、欲しいデザインの欲しいサイズがない悔しさは、何千回何万回って味わってきたんで、この恨み、語らせたら長いです…………」
「翠も、大変だね。……でも、採算取れないし。ボランティアじゃないから、難しいでしょ。色んなサイズの服売るの」
彼女の笑顔が陰って見えるのは、日傘を思いっきり彼女の側に傾けたから――――ではない事は自明だ。
見えるのではなく、実際に陰っているのだという事も。
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