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夕顔別当
第三十一夜
しおりを挟む「なんでお礼? 変な翠」
先程の気遣いが無意識だったとは恐れ入る。
「ちっちゃいものって、何でも可愛いと思う」
微笑む彼女はアパレルショップの店員よろしく、Tシャツを素早く畳んで置いた。
「うーん……。そうですかね? 胸は例外じゃないです?」
最後の抵抗のつもりで腕を組んだが、長い爪を持つ手にどけられた。
「……アタシには、可愛く見える。翠は、好きじゃないかもだけど」
今や私を守るのは、ウエストゴムがビロビロに伸びたショートパンツと、部屋着の適当さからは予測不可能であろう気合いの入ったTバックだけだ。
予定もないのに何故そんな物を……と思われるかもしれないが、上下セットではなくサニタリーでもないショーツの手持ちがTバックしかなかっただけだ。
余談だが、もう何日も帰っていない麗しの我が家にもそれ以外のショーツはない。
「紅さんは脱がないんですか?」
自分は脱がされているのに、相手の着衣が少しも乱れていない状態というのは、納得行かないわ恥ずかしいわで、何度経験しても好きになれない。
もしそういう嗜好なのだとしても、一番最初に靴下をどうにかしてほしい。
でないと、居たたまれない状態になってしまう――――が、今は裸足なので、その点については安心だ。
しかし、今度の相手は見応えのないヒョロガリ君でも不摂生を極めたビール腹でもない。
正直言って、私も、彼女のきっと女神と見紛う程に美しいであろう裸体を拝みたかった。
「んー……。まだ、良いかな」
どうせ脱ぐ気はないのだろうと諦め気味に訊いた所に返って来たのは、意外な答え。
「え」
「今は、アタシが翠を可愛がる時間。だから、脱ぐのは、後」
そう言って、彼女はショートパンツに手をかけた。
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