モヒート・モスキート・モヒート

片喰 一歌

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夕顔別当

第三十五夜

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「……ん」

「声、出ちゃうタイプ? 少し意外」

 思いがけず息が漏れると、彼女はすかさず唇を離した。

「……って訳でもなかった筈なんで、紅さんがテクニシャンなだけですよ。きっと」

「そ?」

 数秒前まで合わさっていた唇の色は、まだ少しも落ちていなかった。

「はい。でも、欲を言えば……一番最後が良かったです…………」

 色なら別に移らなくても良いし、彼女とのキスも好きだが、私にはがあった。

「最後? 翠、エッチの時、最初にキスしないの?」

「……キスがスタートになってる事はありますよね。というか、それが一番オーソドックスな流れかもしれません」

 奥歯に物が挟まった感じの言い方になってしまったのは、致してる最中と前後を合わせてもキスカウントがゼロから一向に動かない場合がある事を知っているせいだった。

「? よくわからないけど、嫌だったんだもんね。ごめん」

「あ、えっと……違うんです! 嫌ではないんです、全然ちっとも! ……けど、前にも説明した通り、紅さんにキスしてもらうと、眠くなってきちゃうんで……」

「……あ」

 もしかしてそうかなとは思っていたが、その事を失念していたらしい。

 彼女は驚いた表情で静止した。
 
「思い出してもらえましたか。そういう訳なんで……まだ寝ちゃう訳にはいかないというか、寝るのは惜しいというか。全身にキスしてくれてるの、ちゃんと見てたいし感じたいんです。だから、唇には……また後でお願いしても良いですか?」

 と断った口で、彼女が一番最初に私にキスをした場所に触れた。
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