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余韻
しおりを挟む実のところ、イけたのかイけていないのかわからない。満足感だけが転がっている。
「……ねえ。よかった?」
――にもかかわらず、気になるのは彼の感想だった。
「最高の気分だ。嫌味じゃねェぜ?」
「わかってる。私もやっと実感湧いた。『帰ってきたんだな』って」
私のほうも気持ちいいことは気持ちよかったし、彼をイかせることが出来たので、これ以上特に望むことはない。
『高級レストランに行って、雰囲気だけを食べている人のようだ』と揶揄されたとしても、その通りだと頷くだけだ。
実際、私はそういう人間だし、それを恥じたことも悪いと感じたこともないのだから。
「…………これってさ、射精の瞬間が幸せのピークだけど、その割に感覚ないのがちょっと残念じゃない? いつも思うけど」
アダルトコンテンツに描かれる過剰な表現には及ばないだろうが、中にはお腹の中があたたかくなったり液体が入ってきたりといったことを感じ取れる人もいるらしく、このうえなく羨ましかったりする。
そういった人たちにとってはなんてことないものかもしれないが、私にとっては特殊技能だ。
経験を重ねるくらいしか鍛える方法はなさそうだし、実現性は低いが、鍛えれば多少はわかるようになるのだろうか。――ねだったら、もう一回ぐらいしてくれないだろうか。
「『じゃない?』って言われてもなァ……。オレにゃそっちの感覚はわかんねェとしか……」
「あ、そうだった」
「なら、面倒くさがらないで着けときゃよかったんじゃねェか? 今回の滞在じゃ使い切れねェくらい持ってきたって言ったろ」
無味乾燥な感想を聞いた彼は呆れたように笑っているが、私の身体を撫で回すだけ撫で回して、ご立派なモノを抜き去る気配も見せない。
「わかってないなあ……。避妊するのが面倒だったからじゃなくて、早く貴方としたかったの。直接触れ合って、貴方のでいっぱいにしてほしかったし…………」
栓をされていても、わずかな隙間から、それは流れ出る。目玉焼きが半熟に焼き上がる前の卵の白身――よりもさらに半透明な液体。
我ながらこんなものに執着するなんてどうかしているとは思うが、本能で彼に惹かれている証拠だと考えれば、案外可愛いものかもしれない。
「…………出てくるときに『しちゃったんだ』ってゾクゾクするから。処理が面倒とかもないよ。会議中に急にドロッて垂れてきたら集中力切れちゃって大変だけど、困ることなんてそのくらいで……」
幸福と疲労が瞼を重くする。せめて自然に抜けるまで、こうしていてはくれないものか。厚い身体を抱き締めた。
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