三千世界の鴉なんて殺さなくても、我々は朝を迎えられる

片喰 一歌

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DESTINY CHAIN

DESTINY CHAIN<LVIII>

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「!」

 ――――けれど、肺いっぱいに彼の香りを吸い込もうとしたちょうどその瞬間にいまの状態を思い知らされ、半分も吸えていないうちから呼吸を一時停止せざるを得なくなった。

(言われてみれば、わたし……気付いてなかったけど、すっごく大胆なことしてるよね!? 胸だって、思いっきり当てちゃってるし…………。お股もびしょびしょなのに、しっかり座っちゃってるから、結局脚汚しちゃってるし……。無意識って知ってるのはわたしだけで、彼にはわざとだと思われてても文句言えないし…………というか、そもそも無意識でも意識的わざとでも、彼にとってはおんなじことだし)

「あはは♡♡ 気付いてなかったか♡ ……きみって、本当にすぐ蕩けちゃうよね♡♡ 恥ずかしいこと言っても蕩けちゃうし、キスしても蕩けちゃう♡♡ やっぱりコットンキャンディみたいだね……♡♡」

 ぴしり、と硬直してしまったわたしの髪を伝い、背中までをゆっくり撫でる彼は、石化魔法を解いている真っ最中の優しい魔法使いのようだ。

(たぶん『恥ずかしがることないのに』って伝えてきてくれてるんだと思うけど、声がよすぎて……♡♡ あと、言ってることもなんか……なんかむずがゆいというか…………♡ おまけに、耳の近くで喋られてるせいで、余計に恥ずかしくなっちゃうよ……♡ 胸だけでも離したいんだけど、そうするにはまず顔を上げないといけないし…………)

「もっとしたい?♡♡」

 わたしが彼を見つめるときは、キスをしたいという意思表示……なのだろうか。

(言えない代わりに、見ちゃってることは…………確かに多いかも……?♡)

 少なくとも、彼のなかではそういうことになっていそうだ。

「…………君は?♡♡」

「俺?♡ 聞き返されるは、想定外だおもってなかったなぁ♡♡ ……でも、答えは決まってる♡ したくないわけがないでしょ♡♡ 俺がきみとキスしたくないときなんて、ないんだから♡♡」

 鼻筋と鼻筋を合わせて笑んだ彼の吐息が、微笑みとともに吹き抜けた。

「……みんなの前でも?」

「したいよ?♡♡ しないけどね♡ きみは人前でイチャイチャするのが得意じゃないし、俺とキスしてとろとろになっちゃってるきみのかわいさを俺以外の男にもお披露目してあげるなんてご免被りたいし♡♡ いままでに決めたふたりのあいだのルール、『人前でのイチャイチャはしない』くらいしかないけど、俺はそこに続きを足したいなぁと思ってたりして……♡」

「……どんな続き?♡」

「『人前ではイチャイチャしない代わりに、ふたりっきりのときは思いっきりイチャイチャする♡♡』♡♡ これが俺の考えてる改正案なんだけど、きみはどう思う?♡ 賛成とか反対とか、別の案を提出してくれてもいいよ♡」

 うなじを撫でられ、頬を包まれる。

 キスを受けたら肯定と見做される――――というよりは、瞳を逸らさせないためだろう。

 煌めく星たちの中心に映り込むわたしは、もじもじしつつも彼をまっすぐ見つめ返していた。
 
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