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第1幕『半人半蛇(蛇人間)』【宵】
第9話『過去の出来事』
しおりを挟む「うん。ひと手間加えるだけで美味しくなるならちょっと面倒でもやろうと思うよね」
すべての料理を移し終えた白夜は、ハッシュドポテトをひとつ自分の口に放り込んだ。――まだ十分に冷めていなかったのか、はたまた彼が猫舌なのか。再び少しだけ開いたかわいい口からクーラーで冷やされた空気を取り込み、クラッシュされたじゃがいもを冷ますために奮闘しているようだった。
「――――と思ったのが間違いだったっぽいんだよね~……。そんときバチッて音して油が腕に飛んできてさ。腕なら夏とかも出してるし普通に飛んでくる可能性ある場所だしで、そこまでビビることないと思うかもしんないけど……。普段あんま料理しないのもあって何気に記憶に残って怖くなっちゃって。それ以来、余計に料理しなくなっちゃったなぁ」
『かわいい~♡♡』と声に出してメロつきたくなる自分をどうにか抑え込み、明るく話し切った。油が飛んできた場所は火傷にもならなかったため傷痕も残っていないが、肘の上のホクロのある位置ドンピシャだったせいで未だにそのホクロを見るたびに思い出してしまっていたりして。
(白夜に数分間熱烈にキスしてもらったら忘れらんないかな~?♡♡)
「災難だったね……。でも、天ぷらとか唐揚げとかにしなくてよかった。グミちゃんが怖い思いしてるのによかったって言うのは変かもしんないけど」
眉を下げた彼は心底安心しているようだった。本気で心配してくれたのももちろん嬉しいが、あたしは目から鱗が落ちる思いだった。
「そっか……! 『怖かったしツイてなかったな~』としか思ってなかったけど、『肉汁で済んでよかった』って考え方もあるんだ……! 揚げ物の油なんて高温だもんね。そんな風に考えたことなかったや。白夜ってすごいね! 励まし上手――てか、前向き思考の達人?」
「僕はグミちゃんに料理なんかさせないよ。安心してね?♡ ……子育ては頑張ってもらうけど」
「え!?」
感動は早くも打ち破られた。――しかも、あたしに感動を与えた白夜その人によって。
(揚げ物しなくていいのは正直助かるけどまた結婚チラつかせるようなこと言って――……。行き過ぎたリップサービスは聞いてて虚しくなるからやめてほしいのに)
見ると、チーズの海は随分と凪いできていた。
(確かに今みたいに発想を前向きなほうに転換させてくれる人がそばにいてくれたらな~とは思うけど……。実現出来ないこと言うんなら結婚詐欺師と同じくらいギルティだよ!! 思わせぶりダメ絶対!!)
「せっかく出来たて持ってきてくれたし、冷めないうちに食べよう」
しかし、彼があたしの気分の変化に気付いた様子はない。そうでなければ、食べ物で機嫌を直すチョロいオンナだと思われていることになってしまう。
「……だね! どこから攻める? やっぱ白夜のおすすめピザその一からかなぁ♡♡ チーズ冷えちゃったら美味しさ半減だもんね!」
だが、他人に機嫌を取らせるなんて人間として未熟だ。あくまで美味しそうなご飯を前にしてわくわくしている風で返した。
「バゲットも冷めないうちに食べたほうがいいかも。でも、キッチンのほうにオーブントースターあるからもし冷めても大丈夫だよ。……はい、召し上がれ」
彼は話す傍ら、クアトロなんとかを大胆に切り分けて渡してくれた。
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