Temptation Invitation

片喰 一歌

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第1幕『半人半蛇(蛇人間)』【宵】

第36話『progress』

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「ずっとそう言ってるじゃん♡♡」

 腰が抜けてしまうのならわかるし、実際に腰を上げているのもなかなかにきつかった。そうなっていないのは彼があたしの腰を元の位置で固定しているからだ。

「そうだけど。…………人は簡単に嘘吐くから。嘘じゃないのかもしれないけど、少し前に言ってたことと違うこと言ったり……。意見がすぐ変わるじゃん。だから、どれが本音なのかわからないんだ。嬉しいこと言われても全部信じていいのかなって考えちゃう」

 少し迷う素振りを見せながら告白されたのは、彼の心の深い部分で孤独に戦ってきたであろう不安感だった。

「あたしのことも信じてくれてなかった?」

「信じてなかった――とは少し違う。『僕が思ってたよりグミちゃんが欲しがってくれてたのがわかって嬉しかった』。……これでわかる?」

「おけおけ♡ そういう感じね♡♡ 完璧に理解した♡♡ ……ところでさ、このポーズ結構きつくて……。迫りくる腰痛の危機を感じる的な…………? ベッドにべしゃってなっちゃダメかな?」

 ダメ元で頼んでみたところ――――。

「ベッドに突っ伏したいの? ……こう?」

 白夜は最奥で止まっていたモノをわずかに引き抜き、ばちゅんっとすごい音を立てて突き立ててきた。

「あ゛ぁぁっ♡♡♡」

 その反動で前に押し出され、膝が倒れる。支点を失った身体は無様に倒れていくほかなく、完全にダイブすることになった。なぜ今回は顔面強打を避けられたのか不思議でならない。

「今のはちょっと乱暴すぎじゃない?♡♡」

 倒れ込む直前で身体をぴたっとくっつけてきた彼に文句をつける。どんなに質のいいマットレスでも思いっきり倒れ込めばそこそこ痛い。

「ごめんね?」

 思いの外近くで聞こえてきた声に、身体を強張らせた。

(ここでキスしてこないの逆に加点対象なポイントたかいんだけど♡♡ ちょっとでも経験あると、なんかあるとすぐキスで誤魔化そうとするもんね。『オンナはキスしときゃ大抵のことは許してくれる』とか思ってんのかな)

「……でも、こうしたら少しだけ蛇みたいじゃない?」

 白夜はキスをしてこない代わりに言い訳を始めた。
 
「どのへんが蛇ちゃんなわけ?♡♡」

 落胆と怒りの混じった感情を押さえつけて尋ねたものの、あたしの喉から出てきたのはベッドの上でしか使わないような声だった。

(なんか悔しいんだけど♡♡ 白夜に言われなくても絶対『蛇ちゃんぽい♡♡』って思ってたし……)
 
 巻き付く腕と全身が重なるのを感じながら断固とした態度で臨むなんて、どだい無理だったというわけだ。

「そう思えないならそれでいいよ。でも、ここからが本番だから」

 状況が把握出来ずに間抜けな声を上げた直後、白夜の手に両手首を掴まれた。錠をかけられたみたいだ。
 
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