yours-夢の罪過-

恋人遊戯

恋人遊戯＜260＞

　気のせいかもしれないけど、少し切なそうな声色だ。気のせいであってくれと強く願っているのは、あらゆる可能性を模索している途中でその理由らしいものに行き当たってしまったから。

（…………今の過去形になにか意味はあるのか？　まさか元カレのこと思い出してる？　……あいつのことは忘れたんじゃなかったのかよ。紗世ちゃんに腹立てたって仕方ないのはわかってる。理解したくもないけどすべきだし出来る。俺にまだ元カレあいつのこと忘れさせてあげれるだけの力とか魅力がないのが悪いんだよ。……わかってるけど腹立つもんは腹立つんだよ！！！　ねえ、紗世ちゃん……。意識飛ばしちゃうくらい紗世ちゃんのこと気持ちよく出来たら、そいつのこと忘れてくれる？　……紗世ちゃんの記憶からそいつのこと完全に消せる？　ゴミ箱に移した時間経過で自動的に消えるデータをわざわざ消すみたいに、跡形もなく……）

「……あ……。ごめんね、千尋くん。なんか今、すっごく変なこと言っちゃった気がする……」
　
　下唇を噛んでも派手な音なんて出ないだろう。舌打ちじゃあるまいし。――それでも、彼女は俺の心を完璧に読んだみたいなタイミングで我に返って謝ってきた。

「……ふ、あっははははは♡♡ 『変・な・こと』？♡♡ 今、『変なこと』って言ったよなあ？♡ 言葉は正しく使ったほうがいいんじゃない？♡ 俺は紗世ちゃんが変なこと言ったのなんてわかんなかったよ？♡ 『変・態・な・こと』だったら堂々と言ってた気がするけど♡♡ まあ、俺は紗世ちゃんの考察通りのこと考えて興奮する性質タチだから、あんまり強くも言えないけどね？♡♡」

　不快な感覚も不吉な胸騒ぎも塗り潰してしまうために、いつもの俺を装った。
　
「…………『入・り・口・か・ら・5・c・m・』で『お・腹・側・』っていうと……♡ 女・の・子・の・カ・ラ・ダ・で・い・う・G・ス・ポ・ッ・ト・じゃん♡♡ もちろん個人差はあるのはわかってるけど、それ目安に見つけるといいってどっかで見たし、紗世ちゃんもこの入り口から5cmくらい入ったところのお腹側……♡♡ ここか♡ 紗世ちゃんここ大好きでめちゃくちゃ感じてくれるよね？♡♡ ちんぽだと体位工夫しないと擦ってあげれないから、今いっぱい押してあげる♡♡ ほらほら♡ 気持ちいいね？♡♡」

　口答えする間も与えず言葉を連ね、絶えず俺を誘惑する場所に指を突っ込み、おそらくこのあたりだろうと見当を付けた場所を圧迫した。