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第一の試練
第一の試練<15>
「まだ半信半疑って感じ? ……私、みどりはどんな漢字書くのかも知らないし、苗字も教えてもらったことなくて、ひらがなで『みどり』って登録してたんだけどなあ……。でも、連絡先残ってないから、その証明も出来ないんだよね。どうしたら信じてもらえるんだろう…………」
「いや、この件はもう本当に大丈夫だよ。疑ってごめん。100%俺が悪いのに、俺が100%信じられるようになるまで証明しようとしてくれて嬉しかったし、それだけでも信じる理由になるよ」
どこをとっても嘘偽りのない言葉だったが、彼女にはいまいち響いていない様子で、どことなくその目は虚ろだった。
疲れている、あるいは落ち込んでいる状態に近いといえば近いが、もっと深刻な、生気が失せたような――――。
「…………もういっそ、鏑木くんが掛け直してみたら?」
やっと目に生気が戻ってきたかと思ったら、彼女は名案とばかりに意味不明な提案をしてきた。
「え?」
聞き返す声には、どこをどうしたら俺が面識のない彼女の友達に電話をする事になるんだ――という気持ちが我ながら滲み出ていた。
「信じてくれたのは嘘じゃないと思うけど、まだ気になってるんでしょ。翠のこと。声聴けば、絶対女ってわかると思うし、こんなに手っ取り早い確認方法もないと思ったんだけど」
「いやいやいや――……。俺はいいけど、翠ってコは急に知らない男から電話来たら怖いだろ。しかも、紗世ちゃんからだと思って出たら男の声が聞こえるんだよ? 期待外れにも程があると思わない?」
「何それ?♡♡ 私からの着信そこまで楽しみにしてくれてるの、千尋くんだけじゃない?♡♡ ……ていうか、女友達の番号から着信あって、声がその相手じゃなくてオトコだったら、なんにも言わなくても彼氏とか旦那さんってわかるでしょ?♡」
裸の胸をつついた彼女は、蠱惑的な魅力を放っていた。――それこそ、『今すぐ押し倒して事に及びたい』という欲望を喚起するような。
「あ……ああ……。言われてみれば、それは確かにそうか…………」
「千尋くんのことは付き合う前から話してて、翠も気になってたみたいだし、喋れたら嬉しいんじゃないかなあ? 『そんなハイスペイケメンが近くにいるのに、なんでアタックしないの!?』って、そういえばずっと言ってたっけ」
(チャットでもそれに近いこと言ってたけど、口頭でも言ってたのか。…………紗世ちゃんが俺と付き合う気になってくれたのは、翠って人が掛けてくれた言葉のおかげもあるかもしれないな。……紛らわしい名前とか思ってごめん! ナイスアシスト!!)
「……だから、翠ってある意味、私たちのキューピッドかも♡♡」
「俺もそんな感じのこと考えてたとこ♡ 翠さんには感謝しないとな♡」
擦り寄ってきた彼女を抱き寄せた。
タイマーを設定していなかった関係でクーラーは寒いくらいにきいていて鳥肌が立つくらいだったが、彼女の体温をより鮮明に感じられたので、むしろ寒くしておいてよかったと思うくらいだった。
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