519 / 655
第一の試練
第一の試練<17>
「そうは言ってもさ、大切な友達の一人なんだろ? 今、確認しなくていいの? その子が本当に事件に巻き込まれてたり、危ない目に遭ってたりする可能性があるんだろ。紗世ちゃんはもしかしたらって思ってるんだろ。今急いで確認しなかったら、あとで後悔するんじゃないの? ……しなよ。絶対したほうがいい。なんかあってからじゃ遅い。迷ってる場合じゃないよ」
そんな表情を見せられて、黙っているわけにはいかない。なるべく落ち着いたトーンで諭した。
「…………そうだね。もしもの場合もあるし。でも、本当に事件に巻き込まれてたり変な男にヤバい事されそうになってたりしたら、犯人たち刺激して逆に翠を追い込むことになっちゃうかもしれないから、電話じゃなくてチャット入れておこうかなあ……」
唇を撫でる彼女は、きっと彼女自身が思っているより冷静だ。
「うーん……。言われてみれば、それが一番穏便に済む道か……? その場に他の奴がいて、そいつが翠さんになにか悪さをしようとしてたとしても、スマホ取り上げられて破壊されるくらいで、命は…………」
――――そのとき、チャット画面に新たなレスがついた。
「紗世ちゃん、画面見て! 翠さんからなんか来てる」
それを読むより先に、虚空を見つめていた彼女の肩を揺らした。
「あ、ほんとだ! なになに…………? 『真夜中に電話鳴らしてごめん! 酔って掛けちゃったみたい。今度詫び珍味持ってくから、鏑木くんさんと食べて。九州でしか買えないやつ。私もデパートのフェアで買ったんだけど、美味しかったから。素麺のお礼も兼ねて』……って。えぇぇ……?」
呑気すぎるメッセージをすべて読み上げたのち、彼女は前屈のような形で前に倒れ込んだ。
「…………何事もなかったみたいでよかった。酔っ払って電話するってことは、紗世ちゃんはそのくらい翠さんに信頼されてるってことだし、なんていうか……ほんとよかったよ。『鏑木くんさん』っていう呼び方はちょっと……ふふっ、気になるけどさ?」
張り詰めた空気が緩んだことと、ズコーッと倒れるコントのラストを思わせる彼女のリアクションと翠さんの独特な呼び名が妙におかしかったのとが重なって、笑いが込み上げてきた。
「私が『鏑木くん』って呼んでたから、それに『さん』つけたんだと思うよ」
「なんとなくわかるけど、そんな……敬称同梱タイプの芸名みたいに扱われてもさあ…………くくくくくっ」
「千尋くんのことそこまで笑わせるなんて、翠はすごいなあ。……お礼とかお詫びとか、いろんなものを珍味に託しすぎじゃないかと思うけど!」
笑い転げる俺とは正反対に、彼女は感心した次の瞬間には柳眉を逆立てていた。本気で心配していたのだろう。
(柳眉というか全身の毛かもだけど――――なんて言ったら、猫扱いジャッジで火に油だよな)
ものすごいスピードで長めの返信を打ち込む彼女を邪魔しないよう、隣からその様子を見守った。
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった
くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。
血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。
夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。
「……涼介くん」
薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。
逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。
夜、来て。
その一言が——涼介の、全部を壊した。
甘くて、苦しくて、止まれない。
これは、ある夏の、秘密の話。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。