yours-夢の罪過-

片喰 一歌

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第一の試練

第一の試練<17>


「そうは言ってもさ、大切な友達の一人なんだろ? 今、確認しなくていいの? その子が本当に事件に巻き込まれてたり、危ない目に遭ってたりする可能性があるんだろ。紗世ちゃんはもしかしたらって思ってるんだろ。今急いで確認しなかったら、あとで後悔するんじゃないの? ……しなよ。絶対したほうがいい。なんかあってからじゃ遅い。迷ってる場合じゃないよ」

 そんな表情を見せられて、黙っているわけにはいかない。なるべく落ち着いたトーンで諭した。

「…………そうだね。もしもの場合もあるし。でも、本当に事件に巻き込まれてたり変な男にヤバい事されそうになってたりしたら、犯人たち刺激して逆に翠を追い込むことになっちゃうかもしれないから、電話じゃなくてチャット入れておこうかなあ……」

唇を撫でる彼女は、きっと彼女自身が思っているより冷静だ。

「うーん……。言われてみれば、それが一番穏便に済む道か……? その場に他の奴がいて、そいつが翠さんになにか悪さをしようとしてたとしても、スマホ取り上げられて破壊されるくらいで、命は…………」

 ――――そのとき、チャット画面に新たなレスがついた。

「紗世ちゃん、画面見て! 翠さんからなんか来てる」

 それを読むより先に、虚空を見つめていた彼女の肩を揺らした。

「あ、ほんとだ! なになに…………? 『真夜中に電話鳴らしてごめん! 酔って掛けちゃったみたい。今度詫び珍味持ってくから、鏑木くんさんと食べて。九州でしか買えないやつ。私もデパートのフェアで買ったんだけど、美味しかったから。素麺のお礼も兼ねて』……って。えぇぇ……?」

 呑気すぎるメッセージをすべて読み上げたのち、彼女は前屈のような形で前に倒れ込んだ。

「…………何事もなかったみたいでよかった。酔っ払って電話するってことは、紗世ちゃんはそのくらい翠さんに信頼されてるってことだし、なんていうか……ほんとよかったよ。『鏑木くんさん』っていう呼び方はちょっと……ふふっ、気になるけどさ?」

 張り詰めた空気が緩んだことと、ズコーッと倒れるコントのラストを思わせる彼女のリアクションと翠さんの独特な呼び名が妙におかしかったのとが重なって、笑いが込み上げてきた。

「私が『鏑木くん』って呼んでたから、それに『さん』つけたんだと思うよ」

「なんとなくわかるけど、そんな……敬称同梱タイプの芸名みたいに扱われてもさあ…………くくくくくっ」

「千尋くんのことそこまで笑わせるなんて、翠はすごいなあ。……お礼とかお詫びとか、いろんなものを珍味に託しすぎじゃないかと思うけど!」

 笑い転げる俺とは正反対に、彼女は感心した次の瞬間には柳眉を逆立てていた。本気で心配していたのだろう。

(柳眉というか全身の毛かもだけど――――なんて言ったら、猫扱いジャッジで火に油だよな)

 ものすごいスピードで長めの返信を打ち込む彼女を邪魔しないよう、隣からその様子を見守った。
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