yours-夢の罪過-

片喰 一歌

文字の大きさ
564 / 656
第一の試練

第一の試練<62>


「かっこいい彼氏と?♡♡ ラブラブだって自慢する方法?♡♡ ……ふぅん……♡ 紗世ちゃんのことだし、なにが飛び出すかまったく未知数だわからないけど、とりあえず聞いてみようか?♡♡」

 強がりでひねくれた性分に口と声帯を操られてもなお、至るところから漏れてしまっているだろう。眼差しとか声とか閉じた口元とか、そのあたりから恋慕の情ってやつと――心の底からの歓喜が。
 
「最初は、24時間で自動的に消えちゃうSNSの機能使ったりするのはどうかなって考えてたんだけど……♡ ああいうの、千尋くんはどう思う?♡♡ ……やっぱりあんまり好きじゃない……かなあ」

 普段から流行を押さえた装いをしている彼女の口から出てくるのも、やはりため息を吐きたくなるほどには現代人ライクな発言だ。

 しかし、俺は彼女の、量産型と呼ばれる型に嵌まりに行っても嵌りきらない、あるいは嵌まり切れない部分をこそ愛している。

(写真は公開するつもりだったのかよ♡ 映像公開しないっていうから、もっとガラッと方向性変えてくるかと思ったのに♡♡ ……いや、まあ、視覚から入る情報の強さは俺もよく知ってるから、気持ちはわかるけどさあ♡ 悪い気はしないし、そこまで自慢したい彼氏でいられてるってことも♡)

 うなじを撫でる手は、俺を丸め込むために興奮を煽る触れ方を選んでいる――というより、その場で話を組み立てているときに手を動かしてしまうのと同じことが起きているだけだろう。

「ああ、あれ? ……ご推察の通り、好きって感じではないんだけど、好き嫌いを論じるステージにすら上がれてないというか。俺、いまいちあの機能の存在意義がわからないんだよな……。自動的に消えるっていったって、吐き出したいけどいずれ消したいことにしては24時間掲載されてるのって長すぎるし、時間超えたら残らないんだから思い出の保管場所にもならない。とにかく中途半端――ってことに加えて、『暇さえあればSNS開いてるような人間だけに届けばいい情報の存在意義って何?』って思っちゃうし。……ごめん、話逸れたな。俺向きじゃないnot for meってだけの話。だから、出来れば、他の方法にしてもらいたいんだけど…………。正直、それ以前の問題じゃないかなって思う」

「…………ふふ、私も同じ意見♡ ……だから、最後まで聞いてくれる?♡♡」

「……え? ……ああ! そういえば、『最初は』って言ってたな。ごめん、話の途中で割り込んで」
 
「ううん♡♡ 自分の意見言ってくれるってことは、ちゃんとお話聞いてくれてるってことだから♡ そういうところも大好き……♡」

 俺の首には、誘惑に勤しんでいた指の代わりに、細い腕が巻き付けられた。

 巻き付く対象の形状に合わせて蔦を伸ばす植物のように、彼女の腕は俺の首に違和感なくフィットした。
感想 0

あなたにおすすめの小説

義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった

くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。 血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。 夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。 「……涼介くん」 薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。 逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。 夜、来て。 その一言が——涼介の、全部を壊した。 甘くて、苦しくて、止まれない。 これは、ある夏の、秘密の話。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

【魔法少女の性事情・1】恥ずかしがり屋の魔法少女16歳が肉欲に溺れる話

TEKKON
恋愛
きっとルンルンに怒られちゃうけど、頑張って大幹部を倒したんだもん。今日は変身したままHしても、良いよね?