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第二の試練
第二の試練<44>
「本当? かなり親しげだったけど」
もう一度言おう。俺は彼女の発言を全面的に信用している。
――――にもかかわらず、疑惑の眼差しを向けてしまったのは、俺が入り込めない数十秒間が発生したことに対する抗議のようなものだ。
俺という嫉妬深い彼氏が横にいながら、他の男との親密さを見せつけるようなやりとりを演じただけでも万死に値する。
まして、俺の嫉妬深さを身を以て知っているのであれば、下手に刺激するような振る舞いは避けてしかるべきではないのか。
「嘘じゃないよ。2年どころか3年近く前かも、セフレだったの。アイツが馴れ馴れしいのは元の性格のせいだし、私の態度が馴れ馴れしく見えたなら…………。たぶん、それもアイツのせい。距離近い――っていったら、よく言いすぎかなあ。鏑木くんの職場とかにもいるでしょ、馴れ馴れしい人。ナリくんもそれなの。こっちだけかしこまってるのが馬鹿らしくなっちゃうから、私もナリくんに対してはずっとあんな感じで――……。一時期は確かにかなり仲良くしてたかもだけど、今はもう全然。――ていうか、連絡取ってないんだから、仲良いとか悪いとかあるはずないでしょ?」
彼女も少し面倒になってきたのか、最後のほうには弁明を投げ出し、開き直るような論調に転身していた。
「…………アイツ、ねえ……」
さっきの馴れ馴れしくてダサいあだ名といい、どうやらナリくんとかいう男は、全自動神経逆撫で装置らしい。
――――前言撤回。やっぱり紗世ちゃんと一度でも関係を持ったことのある野郎は全員いけ好かない。セフレなんてなおさらだ。
「どうしたの?」
「…………今でもたまにしてるんだろ、どうせ」
流れてきた煙草の煙に気付かず思いっきり吸い込んでしまった直後の肺の中みたいに、俺の胸にはメンタルとフィジカルの両面に悪影響を及ぼすであろう強大なもやもやが渦巻いていた。
毒素を排出する要領で言霊に乗せて放たれたそれは、そうでなくても不穏になり始めていた空気をよりいっそう不穏で暗いものに変えた。
もちろん本心から出た言葉ではない。八つ当たりだ。未熟さゆえに自分の中で処理し損ねた感情を丸めて作った呪詛だ。
(なんで俺はいつもこうなんだろうな。……本当は少しも疑ってなんかないのに。スマホ見たりしなくてもわかるよ。……着信画面は偶然とはいえ見ちゃったし、勘違いして盛ったし、最悪な挙動してるけど)
それを唾のように吐き捨てたら、彼女の顔が悲しげに歪んだ気がして、後悔が押し寄せる。
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