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第三の試練
第三の試練<8>
「最後に行ったのが…………えっと、一昨年のお盆? あれ? その前だったかな? ……でも、1回年始に顔見せたような……?」
もっと露骨に嫌な顔をするかもしれないと思っていたが、彼女は『前に海外旅行行ったのいつ?』という質問に答えるように腕を組んで記憶を手繰り寄せ始めた。
しかし、答えが出るまでもなく――というより、答えが出せないのが答えのようなものだし、『帰った』という動詞を無視して『行った』とわざわざ言い換えたところに彼女の気持ちが見て取れた。
(言葉って残酷だよなあ。流し聞きしてても、選ぶ言葉さえ聞き取れれば、その人が話してる物事についてどう思ってるかがわかっちゃう。紗世ちゃんみたいに隠し事が出来ないコだとなおさら。……紗世ちゃんにとって、実家は実家じゃないんだな。謎に俺が食らっちゃった。俺だって両親とは仲良いわけじゃ――――いや待て。仲良いのかな、もしかしてうちの家族。俺からは連絡しないけど、チャットで私信めちゃくちゃ飛んでくるし。昨日はUFOの大群の映像……。送る相手間違えてるんじゃないのか? というか、ネッシーは? もう帰国してデータ整理でもしてるのか?)
ネッシーの姿を捉えることが出来ていたなら、興奮して俺に連絡してくるだろう。チャットではなく電話で。興奮しすぎていなければテレビ電話で。
それがないということはお目当てのUMAには遭遇出来ていないのだろうというところまでは推測出来るが、両親も俺の両親なだけあって、愛と興味を向けた対象に対してはガチすぎるほどガチだ。
つまり、俺は両親がまだイギリスに滞在している場合のことを――寝食を疎かにしているのではないか心配していた。
(早い奴は同世代でも健康面で黄色信号だし、どれだけ若く見えても親世代は思ってるより死に近い。いつなにがあるかわからない。……心配じゃないのかよ、紗世ちゃんは。帰るたびに結婚がどうとか孫がどうとか言われてうんざりしちゃったのかもしれないけど、親御さんが嫌いなわけじゃないんだろ? ついでに寄るくらいでいいから、顔見に行ってあげたらいいのに……。紗世ちゃんママ、いつ紗世ちゃんが帰ってきてもいいように紗世ちゃんのお部屋綺麗にしてるんだよ? 知らないの?)
俺自身が自覚出来ているより親が好きで大切に思っていることもあって、無関心の消極的変換でしかない彼女の返答にどんどん気分が沈んでいく。
彼女にとって、実家というのはせいぜいあまり親しくしていない親戚の家くらいの立ち位置のようだ。
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