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第三の試練
第三の試練<11>
「そうそう、そういう感じ。――――で、どうする? 結婚前の顔見せと挨拶♡♡ いつ行こっか♡♡ 俺は今からでも構わないけど♡」
彼女の疑心が息を吹き返さぬうちに――と話を進める。
俺は彼女との関係を深めることに関して元から前のめりかつ暴走気味なところがあったから、このくらい押しても不審がられはしないはずだ。
ただ、本気で今から行こうとしているわけではない。
まさかこの話に乗ってくるような無鉄砲で無計画なコではないはずだが、かといって俺が話の流れで軽く提案しているだけだと思われても都合が悪い。
彼女には俺が本気で今から挨拶をしに行きたがっているという風に感じてもらわなくてはならないが、断ってもらわなくてはならない。
二つの条件を同時にクリアする必要があるが――さて、どうなるか。
「! 気持ちはすっごく嬉しいんだけど、千尋くんとのデートは二人っきりで楽しみたいし……♡ 今日はきっとおとうさんいないから……。2回も行くの面倒だと思うし、アポ無しとか直前アポは印象悪いから、また今度付き合って?♡♡」
俺の思惑通り、彼女は先ほどの提案を間に受けてくれて、なおかつ丁重に断ってくれた。
申し訳なさそうに両手を合わせているのも可愛らしい。
(やっぱりちゃんとしてるんだよな。常識がある。クソ生意気で仕事の出来ない後輩たちは紗世ちゃんを見習うべき――っと、せっかくデートなのに仕事のこととつまらないこと考えるのは、スパダリ失格だよな。やっぱ好きだなあ、紗世ちゃんのこと♡♡ 俺の理想の女神で天使……♡♡)
断った理由もきちんと言語化してくれて、遠回しに挨拶に来てほしくないわけではないと伝えてくれているのも気遣いが感じられて嬉しかった。
「俺の印象まで考えてくれて、ありがとね♡♡」
「そういうんじゃないよ。千尋くんは私の何倍もちゃんとしてる人なのに、私のせいで誤解されちゃったら悲しいもん」
「そこまで俺の印象大事にしてくれて嬉しいなあ♡♡」
「好きな人のこと、誤解されたくないもん。それとね――」
「うん。それと?」
「…………今、お洋服千尋くんに借りてるでしょ? めちゃくちゃ可愛いパーカー。おかあさん、これと似たようなの私に着せるのが趣味でね?」
(紗世ちゃんは知らないんだろうな。俺が動物の耳がついた着ぐるみっぽいフーディーばっかり着るようになったきっかけが、紗世ちゃんが昔、俺に言ったことだってこと。……俺も本人に言ったことないし、当然なんだけど。いつか言いたいな。完全に趣味だと思われてるし。実際趣味だけど。出発点は紗世ちゃんだから)
突然始まった昔話は、俺が今のようなファッションを好むようになったきっかけとも深く関わっているようだ。
思いを胸に秘め、オーディオの音量をこっそり下げた。
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