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第三の試練
第三の試練<19>
<紗世side>
千尋くんとの約束通り、1人で実家に来ている。
おとうさんはどうしても外せない仕事があると言っていたから、今日の私はおかあさんに会いに来たようなものだ。
私の足が実家から遠のいていたのは、彼女の相手に疲れていたのと、私自身が親に顔向け出来ない生き方をしていたからだった。
(でも、もう後ろめたいことなんてないし。今日の帰省で大事なことは、彼氏出来たよ報告と千尋くんの売り込み! 恋バナは二の次)
数年ぶりに訪れた地元は駅前を中心に様変わりしていたが、実家は少しも変わっていなかった。
――と思ったけれど、外壁の塗り直しくらいはしているのかもしれない。
特に躊躇うこともなく、インターホンを鳴らして到着を告げると、家の中から慌しい足音が聞こえてきた。
「……ただいま」
目の前の扉が内側から開いて、かろうじて聞こえるくらいの声量でこの場に最も相応しい挨拶をした。
「あら~♡♡ あらあら~♡♡ 久しぶりねえ、紗世ちゃん♡♡ 見ないうちに女っぷりが上がっちゃって♡ 今もイケメンエキス吸いまくりなの~?♡ もっと頻繁に帰ってきてくれてもいいのよ?♡ ママ、寂しかったんだから~……」
私を招き入れてくれたおかあさんは、なにひとつとして変わっていなかった。
(むしろ若返ってるかも? 何歳までこの感じで行くつもりなんだろう、この人)
確認が済むと同時に、私はどうして忘れていたのかもわからないほど重大な事実を思い出した。
(相変わらずのロリロリぶりっこボイス! おかあさん、年齢不詳っぷりに磨きがかかってるなあ……。しばらく帰ってきてなかったから、私のことどうでもよくなったんじゃないかと思ってたけど、一人娘だしそうもいかないか)
――――そういえば、私のことを『紗世ちゃん』と呼んで猫っ可愛がりしている人は、千尋くん以外にももう一人いたんだった。
最近は、時間があれば千尋くんと過ごしていたから、記憶から消えかけていたけれど。
(下手したら、千尋くん以上に私に甘々……なのはまあいいんだけど、おかあさんは話通じない――……っていうのもちょっと違うかも? ずっと平行線なのに、ずっと意見が合致してるみたいに自分の主張ごり押してきて根源的恐怖が止まらないみたいな……。考えれば考えるほど、人間版サイコスリラー…………。いやむしろ邪神? 神話に語られる一柱にも引けを取らない混沌……。おかあさんの子にしては普通に育ったほうだよね、私。……普通……だよね?)
おかあさんは、私を家に入れるなり抱き着いてきた。
むぎゅむぎゅ圧迫されながら考える。
たぶんこれがおかあさんの全力だ。千尋くんのハグと大体同じくらい。
(千尋くんは……あれでも相当手加減してくれてるんだろうなあ。……今度お礼言っとかないと)
用意されていたスリッパに足を入れ、お詫びと言い訳を考えた。
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