yours-夢の罪過-

片喰 一歌

文字の大きさ
188 / 697
●REC

●REC<42>


(でも、今更嫌いになんてなれないよ。嫌いになれる方法があるなら教えてほしい……。こんなことされたってわかっても嫌いになれないんだったら、この気持ちは本物でしょ? 本物の恋心――だよね?)

 人には得手不得手があると思うが、私には『人を好きになることは得意だけれど、一度好きになった人を嫌いになるのは苦手』という、致命的な欠陥とも呼べそうな特性があった。

(本当のこと話しても大抵の人は信じてくれないのは、今までの経験からわかってる。遊びで男乗り換えてるようにしか見えないんだよね。……何股もかけてた私が全面的に悪いけど、ちゃんと全員好きだった。……きっと今でも、みんなのことは少しずつ好きなまま。この気持ちが今より強くなることはないけど。名前も顔も抱き方も全部覚えてるわすれてない……)
 
 次から次へと恋または擬似恋愛の相手を求めていたのも、消えることのない『好き』を無理矢理新しい『好き』で塗り潰してしまおうとしていたからだ。

(正直に話したら、鏑木くんはきっとわかってくれる。受け入れたくなくて毒吐いたりはするかもしれないけど、私が悩んできたことをちゃんと真実として受け止めてくれる。言い訳だなんて決めつけたりしないで)
 
 自分を癒すそれ以外の方法を、私はずっと持たなかった。求めなかった。求めようともしなかった。

(…………だけど、こんなこと言ったら傷付けるから、鏑木くんにだけは絶対知られちゃいけない。……わがままだけど、苦しいな。何年も何年も鏑木くんの優しさを搾取してた罰なのかも。なんでこんなひどい女のこと、ずっと好きでいてくれてるんだろう……)

 前に出来た傷の痛みを紛らわすために別の場所にもっと深い傷を付けるような行いを彼はよしとしないだろうし、一途で独占欲の強そうな彼のことだ。
 
 彼以外のオトコに向けているとあらば、LIKEの感情に毛が生えた程度の好意でさえ、許してはくれないのではないだろうか。

(『気持ちに応えたい』っていうと同情みたいだけどそうじゃなくて、私は鏑木くんのこと、もっとちゃんと好きになりたい。今もちゃんと好きなつもりだけど、鏑木くんの『好き』に比べたら、私の『好き』なんて小さすぎて軽すぎて――――。私自身がまだ信じきれてない気がするの)

 じっと整った顔を見つめていたら、なんの前触れもなく長い腕が伸ばされ、身も心も囚われてしまった。

「きゃ……っ♡♡ 鏑木くん?♡♡ どうしたの?」

「寂しそうな――どっちかっていうと切なそうな、かな? どっちでもいいけど、紗世ちゃんのお顔見てたら抱き締めたくなっちゃった♡♡ ……嫌だったら、全然振り解いてもらって構わないから……」

 その言葉通り、彼の腕は回されただけといっていい。
感想 0

あなたにおすすめの小説

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

乳首当てゲーム

はこスミレ
恋愛
会社の同僚に、思わず口に出た「乳首当てゲームしたい」という独り言を聞かれた話。

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

お兄様「ねえ、イケナイ事をしよっか♡」

小野
恋愛
父が再婚して新しく出来たお兄様と『イケナイ事』をする義妹の話。