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●REC
●REC<54>
<紗世side>
「あの日、紗世ちゃんが寝ちゃったあとに残念だなあと思うことがあったとすれば、肩貸しちゃってて可愛い寝顔が見れなかったことだけだよ。まあ、ご存知の通り、寝顔はそのあと堪能させてもらったし?♡ 紗世ちゃんの安眠のが大事だし♡ 申し訳ないとか思うことないからね」
ずっと穏やかで父性や母性すら感じるほど慈愛に満ちていた眼差しの合間に、ほんの少し不純物が混じってきたような気がしたけれど、気のせいだったのかもしれない。
(あのときは一回で終わらせてたけど、鏑木くんは本当にあれで満足出来たのかな。ずっと私のこと好きで、だけど報われないのがつらくてあんなことしちゃったんだよね? 私にネタバラシするところまでひっくるめた全部が鏑木くんの計画で、意識させて振り向かせるために――……なんて、きっと考えすぎだよね……?)
不純物というのは、言うまでもなく性的欲求のことだ。
彼の醸し出す雰囲気に混じった色はすぐさま元の色に紛れて見えなくなった――と思うけれど、ぼやけた視界では何が真実でどれが錯覚なのか見分けもつかない。
「……鏑木くんは私のためにあんなこと……?」
半開きになっていた目を仕方なく開けた。ここからは声色だけを頼りに彼の本心を見極めることは不可能だろうと判断してのことだ。
「そんなんじゃないよ。俺はチャンスだと思っただけ。紗世ちゃんは元カレよりも好きになれる奴を探してる最中で、俺は元カレを忘れてもらって俺のことを好きになってもらいたい。――――だから、『やるなら今だ』って思っただけ」
太陽から逃げ回る吸血鬼よろしく純度の高い眼差しに怯んでしまって、飛んでしまった眠気を呼び戻したい気持ちに駆られた。
「そっかあ…………」
クラリティで表すとすれば間違いなくフローレスであろう澄んだ瞳をじっくりと観察する。
(前から定義が難しい感じの仲ではあったし、鏑木くんの気持ちは今まで関わってきた誰よりも強そうだし、こうなったきっかけとか経緯とかはこの際どうでもいいんだけど……)
言語化された私たちの状況は、双方打算的な考えの上で生み出された――あるいは作り出された――ものとしか言いようがなかった。
彼と私の関係の歪さについては今更なので構わないけれど、脆く崩れ去ってしまいそうなことがとても恐ろしかったし、それ以上に嫌だった。
(突然すぎる変化がいい結果で終わったためしないからなあ…………。せっかく始まったのに、あっという間に終わっちゃうとかやだよ……?)
私はスタートを切ったばかりの恋に全身を委ねてしまっていいのかという迷いを振り切れずにいた。ぎゅっと握ったのは、やはり彼のお気に入りの一着だった。
(……鏑木くんは持ってる服全部お気に入りって言うけど、私もお気に入りの女の子のひとりだったりはしないよね……?)
彼の身の潔白は誰より知っているはずなのに、自分がその日のコーデを決めるくらいの気軽さで男を取っ替え引っ替えしていたせいで、よくない考えに頭を乗っ取られそうになった。
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