乙男女じぇねれーしょん

ムラハチ

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第十一話 少女の誘拐

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 コムさんとシオンさんがメンバーから一時的とは言え抜けた穴は大きかったが、紅に続き期待の新メンバー、伊砂玲於那の妹ミトちゃんが加わり、僕たち乙男女じぇねれーしょんのパフォーマンスも形を取り戻し、レッスンにも一層真剣さが増した。

 
 「どうよ?ミトちゃんの実力。私の目に狂いはなかったでしょう?」
 
 「うんうん、ダンスだけじゃなく歌もこれだけやれるなんて、ブランクがあったとは思えないよ」
 
 僕は素直な感想を述べた。
 
 「まだまだ粗削りなところはあるけど、コムさんとシオンさん達に教えてもらったらほぼ完璧だな」

 みんなに褒めちぎられても何食わぬ顔しているミトだが、ルカにも褒められ少し頬が赤らんでいる。
 
 「これくらいどってことないよ。ゲームはまだまだシショーには敵わないけど」

 「その『シショー』ってのやめてくんねえかな。調子狂うんだよ」

 ミトちゃんは僕たちとすぐに馴染んでいった。

 その中でも少し厨二感のあるミトちゃんと、妄想大好きのあるアルンちゃんは気が合っていた。
 
 二人の年齢も同じらしく、ミトちゃんが来てるときはアルンちゃんも楽しそうに過ごしていた。

 
 そのレッスンの最中に二人の見知らぬ男が入って来た。

 「すいません、警察の者ですが、少しお話をお伺いしてよろしいでしょうか?」

 「はい、どういったご用件でしょうか?」

 「ちょっと写真を見てもらいたいのですが、この少女達の顔をご存じでしょうか?」

 刑事たちは二人の少女が写っている1枚の写真を見せてきた。

 「これって、確か前のフェスの時に一緒だった、えと……あ、ララちゃんレレちゃん!」

 「はい、そうです。半高《はんだか》ララさん、レレさん、中学生の双子の姉妹です」

 「その子たちがどうかしたんですか?」

 「実は先日から行方がわからなくなっているのです」

 「え!?二人ともですか!?」

 「はい、そうです。それで少しでも接触があった人達に情報を聞いてまわっているのですが、なにかご存じないでしょうか?」

 「そう言われても、私たちもこないだのライブでちょっと一緒だったっていうだけで、ほとんど接点ないんです。誰か知ってる子いる?」

 みんな首を横に振った。

 「刑事さん、それってもしかして、最近多発してる少女誘拐事件と関係があるんですか?」

 「捜査がまだ始まったばかりなので、なんとも言えないのですが、狙われてる年代や、身代金の要求がない点など、他の事件とも似通ってるところがあるので、その可能性も否定できません」

 「そうなんですね。でも、お役に立てなくて申し訳ないんですが、あたしたち何も知らないんです」

 「そうですか。お時間ありがとうございました。もしなにか情報あれば、なんでもよいのでご提供ください。それでは失礼します」

 刑事は数分で出て行った。

 「ほんと最近物騒で嫌よねえ」

 「あの子達、無事だといいんだけど……」

 「あれ?アルンちゃんは?」
 
 気付くとアルンちゃんが消えていた。
 
 見渡すと、部屋の隅の方に隠れていた。

 「どうしたの、アルンちゃん?」

 「なんか怖いおじさんいた!」

 「さっきの人達?怖くないわよ。それにもう帰ったから大丈夫よ」

 「よかったぁ。魔界へ連れ去られるかと思った」

 「え!?魔界!?今の人魔族だったの?」
 
 ミトちゃんが反応した。

 「うん、そんな気がした」

 「ぐぬぬ。次奴等が来た時には、我がサリエルの鎌で冥界への供物として捧げようぞ」

 二人はこんな感じで、よくふざけあっている。
 

「さあ、レッスンはこれくらいにしてカフェの営業の準備も始めるわよ」
 
 ララちゃんレレちゃん達のことは気がかりだったが、僕たちにはどうすることもできず、自分たちのやるべきことに戻った。
 

 「あれ、でも今日まだ配達なにも届いてないですよ」

 「そんな訳ないでしょ?もうこんな時間よ?紅ちゃん昨日発注してくれた?」

 「あ!」

 「あ!じゃないわよ!忘れてたの!?」

 「ごめんなさい、うっかりしてた……」

 「もう!食材足りてる?」

 「牛乳だけ買ってくれば、あとはなんとかいけそうです」

 「ええ!一番大事なものじゃないの!」
 
 「牛乳くらいスーパーで買えばいいじゃないですか?」

 「ダメよ!うちの看板商品の乙クラまんじゅうのミルク餡はスーパーの牛乳じゃ作れないし、ちゃんとメニューに『牧場の搾りたてミルク使用』って表記してるでしょ?」

 「誰も気にしてませんよ。てか客入んないでしょ?」

 「ダメ!今のご時世そういうの厳しいんだから、紅ちゃん責任取って買ってきなさい。お店の車貸してあげるから」

 「え、わたし免許ないんだけど……」

 「んもう!」

 「あ、じゃあ僕行ってきますよ」

 「ダメよ、あなた方向音痴でしょ。こないだも中央市場まで何時間かかったと思ってるのよ!」

 「あ、あれはナビが変なとこ案内しだして……」

 「いいわ、じゃあ紅ちゃん付いてってあげて」

 「ええ!?」

 「元々誰の責任よ!?」

 「わかりましたよ……」
 
 ふてくされながら返事する紅。
 
 
 そして僕と紅は会社の車に乗って、神戸から山側にある牧場に牛乳を買いに出かけることになった。

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