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1章

(44)ウィークスはまさかの処女

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「はぁ~……」

ウィークスはバレないように
小さくため息をつく。

(団長が妖狐との会談に私を連れて
 行かない理由がこれだったのか)

エインセルがウィークスに
ピッタリくっついている。

ウィークス1日好きにし放題券が
使われている最中である。

エインセルは四六時中くっついては
事あるごとにウィークスに
命令を出している。

ウィークスはメンタルが
やられそうになっていた。

朝ごはんの時は、エインセルが
「あーん」と言って口を大きく開けて待っている。

今までの人生でそんなことをしたことが
ない。

エインセル用にスプーンを用意して
ウィークスは食べさせてあげる。

「違うよ! そういう時は
 『はーい、アーンしてくだちゃい』って
 言いながら食べさせるんだよ」

(なんて要求をしてくるんだ)
ウィークスはイライラするというより
恥ずかしいという気持ちの方が
勝っていた。

「それとアーンするときは
 ウィークスのスプーンじゃなきゃやだ」

「ありえません」

「団長の命令に逆らうのかな。
 法皇国を滅ぼす気がないなら
 別にしなくていーよー」

エインセルは最低なやつだった……

(わたしの着替えの最中も
 ずーっと真顔で見ていたし、
 今まで会ったことがなかった
 変態という人種がこれなのか)

(そしていま、ずーっとわたしの胸に
 顔をうずめている)

「わたしはそこには自信がないのですが......」

ウィークスは自分の胸に対して
自己肯定感が低い。

「何言ってるの?

 こんなにも素晴らしい胸は他にはないよ

 小さくもなく、そして大きくもなく

 これぞアルデンテだよ」

訳のわからない言葉で褒められる。

(小さくもなくって言った!

 おっぱい体操がついに役立った!)

心の中でミニウィークスが万歳をしている。

「いつまでそのように
 しているのでしょうか」

すこし上機嫌になりながら確認する。

「たしかにそろそろ次にしようか」

「次があるのですか?」

「うーん、次はチュウ!」

「申し訳ありません。

 そういったことは大切な方として
 ください」

「ウィークスはレアで大切な人だよ」

「......わたしの初めては大切な人と
 決めているので......」

「未経験なの?レア!レア!

 わかった!

 チュウしてくれたら副団長だけ
 特別に召喚に応じてあげる」

「結構です。
 それならキスをせずに人生を
 終えようと思っています」

ウィークスは処女らしく
貞操観念が高い。

「うーん……残念!

 ウィークスとのチュウは
 2番目以降でもレアだ!

 いつでもまってるよ、僕は」

そしてこの後も様々な要求に耐えながら
1日を終えたウィークスであった。
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