ガラスの靴は、もう履かない。

蘇 陶華

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崩壊する虚構の城

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架の元に入った一本の秘書からの電話。それは、父親である会長が倒れたという知らせだった。ピアノを諦めた原因の一つが父親だったが、会社の柱でもある会長が倒れたと言う知らせは、まだ、基盤を築き上げたいない架には、衝撃だった。義父の莉子の父親との関係も、噛み合わない状態で、自分の城が足元から崩れ落ちる錯覚があった。
「もう、一つ、残念な話があります」
「なんなんだ・・・早くしてくれ」
父親の搬送先である病院に駆けつけようと焦る架に秘書が告げた。
「奥様のお父様に、汚職の嫌疑があり、立件されそうです」
「え?」
架の父親が倒れた原因が、莉子の父親の汚職が原因だった。共倒れ。その言葉が、頭に浮かんだ。
「莉子は、知っているのか?」
「いえ・・・まだです」
「とりあえず、病院に行く」
「噂を聞いた記者達が、集まっているかもしれません。よした方が・・・」
「今行かないで、どうする?」
弁護士の手配を済ませ、架は、駐車場へと駆け出した。莉子は、なんて言うだろうか?散々、莉子を追い詰め傷つけた。自分の側にいながら、莉子の心は、どこかを向いていた。得体の知れない女。自分は、嫌っていた。自分の隣にいる資格のない女。追い出したくも追い出せない。苦しめばいい。そう思っていた。これは、その報いだ。莉子の父親に縋っていた会社は、崩れ始めている。この所、大手の参入もあり、業績はイマイチだった。経営者の中には、自分の手腕を批判する者も出ている。そこに綾葉の醜聞だ。
「さすが、格式高い芸術家は、やる事が違うよ」
派閥の異なる役員達が、失笑した。
「莉子」
莉子は、自分をどう思っている?転落事故で、一時的に記憶を失った莉子は、車椅子となった。生きる気力を欠いた莉子は、鮮明さを失った。自分の隣にいても、輝く力を失い人形の様だった。あの綾葉の影に隠れるようだった莉子が、輝き始めていた。
「あいつか?」
莉子に生きる術を与えた機会を作った人物。今、莉子は、一人でいるのか。あの日から、莉子は、自宅に帰らなくなった。追い詰め、自宅で倒れ救急搬送された。
「自分の代わりとして、生きろ」
新に嫉妬して、あんな言葉を吐いた。莉子が、自分に合わないのではなく。合わないのは、自分で、最初から、この結婚は、無意味だった。自分が、逃げる理由が、この会社だった。
「莉子出てくれ」
架h、莉子に電話していた。
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