星渡る舟は、戻らない

蘇 陶華

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目の見えな私ができる事

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仕事をする。社会人として、当たり前の事が、視力を失った者には、とても、ハードルが高い。だけど、澪は、親のバックアップもあって、仕事で、ある程度の地位を保持する事ができていた。きっと、事故に遭う前は、恵まれた家のお嬢様だったんだと思う。インテリアの仕事を始め、欧州の雑貨類を仕入れる仕事をしていた。その頃から、オーガニックな物に惹かれ、アロマの勉強を始めていた。日本で、和のアロマもあるのじゃないかと探し始め、そこから、リフレの仕事に興味を持ち始めていた。その頃、事故にあった。失った視力と引き換えに、別の能力を授かった。目の見えない者達は、他の感覚が優れてくる。特に聴覚。澪の場合は、声を色で見る事もできたが、もう一つ、嗅覚に優れていた。アロマに惹かれたのも、そのせいで、和のアロマを取り入れたりしながら、リフレの仕事を始めていた。視覚障害者にマッサージ師が多いのも、よくある話で、澪は、会社に、リフレの部門を立ち上げた。オーガニックなアロマを探し、農家と提携し、自分のブランドを立ち上げた。「MIO」自分の名前を取ってつけた。親の資金援助もあったが、澪の才能もあり、アロマとリフレのサロンは、若い女性の関心を買っていった。目の見えない事が、この仕事では、大きな障害にならなかった。幾つもの香を、分別し、視覚には、とらわれない感覚で、次から次へと新商品を開拓していった。マッサージも、得意である。澪の指先、一つ一つが、澪の目になっていた。
「店長。キャンセル待ち、入れていいですか?」
澪は、小さいながら、サロンの店長になっていた。
「う・・・ん。こんなに入れて、お客様に寛いていただけるかな」
テレビに出てから、予約がいっぱいになるのは、嬉しいが、なんとなく、気忙しい雰囲気が、お客様に伝わるのが、申し訳ない。アロマを使う為、盲導犬のアポロンには、害になってしまうので、部屋を別にしている。窮屈な思いで、仕事をしている日が続いている。仕事で、成功するのは、嬉しいけど、何か、違う気がする。目に見えない自分が、こうして、仕事ができるのは、嬉しいけど、自分が、求めていたのとは、違う気がする。
「別な日をお取りして。キャンセル待ちでは、申し訳ないし」
もう、随分、アポロンと同行してない。アロマは、犬や猫に取って、毒になるので、なるべく接触のないようにしている。アロマを使用するマッサージは、なるべく、スタッフに任せて、自分は、商品の選定や開発を主に行なっているが、どうしても、香がついてしまう。そんな時は、アポロンに休んでもらう。自分もストレスになってしまう。
「随分と、忙しそうだね」
周りのスタッフの空気が変わった。澪に声をかけてきたのは、同じ会社。つまり、澪の父親の会社の右腕とも、噂される高岡だった。
「どうしたんですか?こちらに、顔を出されるなんて」
若いスタッフの声が変わった。彼が、来ると、皆こうなる。澪は、少し笑った。
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