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その時、僕は。
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僕のバイオリンと萌のピアノとで、何とか場を乗り切ったライブに榊さんが着ていた。もちろん、娘である萌のピアノを聴きに来たのだが、目的は、それだけではなかった。
「自分も力があるうちに、残したい」
連絡をもらった時には、何の事かわからなかった。
「直接、会って話したい」
「もちろん、直接、逢える事は嬉しいんですが・・・」
榊さんの病状が心配だった。
「顔を見て、話がしたいんだ」
いつになく、様子がおかしい。
「萌も、喜びますね」
「いや・・・別に、萌を喜ばす為ではないんだ。もしかしたら、その逆かもしれない」
「どういう事ですか?」
直接、伝えたいって事は、あまり、いい話では、ないのだろう。
演奏を前に、榊さんが、そんな事を伝えて来るのは、意外だった。
いつも、演者の気持ちを考えている人なのに。
少し、焦っている様にも思えた。
「パパが後で、来るって言っていたわ」
萌は、笑っていた。
「海にどうしても、伝えたい事があるって」
「いい話?」
「だと思うわ」
僕に伝えたい話は、いい話だと言う。
この後、榊さんが現れると
「パパ。どうだった?」
自分の腕を自慢するかの様に、声を掛けてきた。
「海と話がるのでしょう?外で、待っているから」
榊さんの背中を押すと、軽く瞼を閉じて、ドアを閉めた。
「あぁ・・・本当に、賑やかすぎて」
「性格がピアノに出ていますね」
「音が乱律だろう」
「いや・・・とても、軽やかですよ」
「そうか・・・」
そう言いながら、榊さんの声が曇った。
「大事な話って?」
「頼みがある」
「はい?」
「この間の留学の話なんだけどな」
「えぇ・・」
榊さんの紹介で、一人分だけ、枠を開けてもらった。ドイツの学校に行けば、僕は、バイオリニストとしての、道が開けると言う。
僕は、勿論、快諾した。
いつまでも、燻って痛くない。
あの女性は、光を失った身でありながら、自分の輝かせている。
あの人と同じ光になりたいから。
「少し、早く、行く事になりそうだ」
「少し、早くとは?」
「私が、元気なうちにだ」
「榊さん?」
僕は、まだ、知らなかった。
榊さんが、深刻な状況にあるなんて。
「海。私ができる事は、何でも、やっておきたい。君を立派なバイオリニストに育てておきたいんだ」
「それは、嬉しいですけど。どうして、そこまで」
「私には、返したい恩のある人がいるって、話をしたな」
「はい。確か、キャンプ場のレストランで」
あの後、澪と離れる事になった
「君のお父さん・・・に、恩があるんだ」
お父さん。
そう聞いた時に、時間が止まった。
「自分も力があるうちに、残したい」
連絡をもらった時には、何の事かわからなかった。
「直接、会って話したい」
「もちろん、直接、逢える事は嬉しいんですが・・・」
榊さんの病状が心配だった。
「顔を見て、話がしたいんだ」
いつになく、様子がおかしい。
「萌も、喜びますね」
「いや・・・別に、萌を喜ばす為ではないんだ。もしかしたら、その逆かもしれない」
「どういう事ですか?」
直接、伝えたいって事は、あまり、いい話では、ないのだろう。
演奏を前に、榊さんが、そんな事を伝えて来るのは、意外だった。
いつも、演者の気持ちを考えている人なのに。
少し、焦っている様にも思えた。
「パパが後で、来るって言っていたわ」
萌は、笑っていた。
「海にどうしても、伝えたい事があるって」
「いい話?」
「だと思うわ」
僕に伝えたい話は、いい話だと言う。
この後、榊さんが現れると
「パパ。どうだった?」
自分の腕を自慢するかの様に、声を掛けてきた。
「海と話がるのでしょう?外で、待っているから」
榊さんの背中を押すと、軽く瞼を閉じて、ドアを閉めた。
「あぁ・・・本当に、賑やかすぎて」
「性格がピアノに出ていますね」
「音が乱律だろう」
「いや・・・とても、軽やかですよ」
「そうか・・・」
そう言いながら、榊さんの声が曇った。
「大事な話って?」
「頼みがある」
「はい?」
「この間の留学の話なんだけどな」
「えぇ・・」
榊さんの紹介で、一人分だけ、枠を開けてもらった。ドイツの学校に行けば、僕は、バイオリニストとしての、道が開けると言う。
僕は、勿論、快諾した。
いつまでも、燻って痛くない。
あの女性は、光を失った身でありながら、自分の輝かせている。
あの人と同じ光になりたいから。
「少し、早く、行く事になりそうだ」
「少し、早くとは?」
「私が、元気なうちにだ」
「榊さん?」
僕は、まだ、知らなかった。
榊さんが、深刻な状況にあるなんて。
「海。私ができる事は、何でも、やっておきたい。君を立派なバイオリニストに育てておきたいんだ」
「それは、嬉しいですけど。どうして、そこまで」
「私には、返したい恩のある人がいるって、話をしたな」
「はい。確か、キャンプ場のレストランで」
あの後、澪と離れる事になった
「君のお父さん・・・に、恩があるんだ」
お父さん。
そう聞いた時に、時間が止まった。
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