雪別れ道のモフモフ王〜妖鬼冥婚編〜六芒星に守られた都市がある事をあなたは、知っていますか?

蘇 陶華

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炎龍と母を知らない子

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「陸鳳が、炎龍に襲われた親子を助けた」
その噂は、山々を駆け巡った。
「炎龍を一人で?いくら、山神の子でも、無理だろう」
獣神達が、口々に勝手な憶測を述べていた。
「あんな簡単に、炎龍を陸鳳が倒せる訳がない。元々、弱っていたのではないか?」
「それとも、人間の母親が倒したのか?」
「まさか、赤子の陸羽が?まさか」
あの妖獣が、炎龍だったとは、気が付かなかった。
自分の知っている炎龍は、再生を司る神獣。人間を襲うはずはないし、簡単に倒せる獣では、なかった。
「誰かに、倒された後だとしたら?」
それも、今となっては、わからない。
とにかく、陸羽の母親は、死んだ。
自分のつまらない嫉妬のせいで。
感情に囚われると、ろくな事がない。
父神は、言っていた。
「人間という者に、興味を持ってしまった」
弁解していた。
雪山で、倒れていた村娘を助けてしまった。
自分の立場と、相手が人間という事で、踏みとどまっていたが、その一線を超えたのは、人間だったと父神は、後から、弁解した。
「役目で、一緒になった能登は、違う」
母は、決められた通りに、父と一緒になっていた。
二人の獣神に感情はない。
まして、恋心なんて、存在しなかった。
父神が、始めて恋したのが、陸羽の母親だった。
自分の母親ではない。
「人間の血が混じった子供なんて、不吉だ。捨ててしまえ」
誰もが、口々にそう言った。
「陸鳳。育てる事はできるのか?」
見かねて、陸羽を育て上げたのは、父神と別れて、姿を消していた母だった。
「縁あって、生まれて来たのだ。いつか、お前の役に立つだろう」
周りの獣神達の反対を押し切り育て上げた。
陸羽は、頼り甲斐のある弟となった。
「私の役目は、これまで」
陸羽を育て上げると、母は、また、姿を消した。
次第に父神に似てくる陸鳳と一緒にいるのが、辛かったのかもしれない。
結局、2人きりになった。
「人間のいる世界に降りるのは、やめよう」
母の言いつけ、通り、陸鳳は、山奥で、陸羽と暮らす事になる。
次第に、人間の生息地は、山の麓まで、及び、共存が困難になってきた。
そんな時、麓の村に、都会から、一人の女性がやってきた。
まだ、あどけない少女の桂華だった。
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