6 / 9
希望への脱出
しおりを挟む
僕が、捕えられた車の中には、たくさんのゲージが積み重なれ、何頭かの犬や猫が、ひしめき合っていた。僕は、差し出された水を飲みながら、あたりを見回すと、ふと、不思議な共通点に気付いた。
「あれ?」
僕は、首を傾げた。みんな汚れ痩せ細ってはいるが、不思議な事に、MIXの犬は、いなかった。みんなどこかのブリーダーから連れてこられた様な犬や猫達ばかりだった。
「不思議でしょう?」
僕の視線に気が付いたのか、隣のゲージにいる豆柴が答えてくれた。
「私の友達は、ここに入れてもらえなかったの」
「え?」
「もう、何日も食べ物がもらえなくて、困っていたの。食べ物を差し出されて、捕まってしまったけど、先に捕まった私の友人は、食べ物をもらっただけで、この車には、乗せてもらわなかったの」
「置いてこられたの?」
「そう」
僕は、用心深く、人間達の行動を見ていた。確かに、雑種の子達は、車に乗せていない。他の車とすれ違った。保護にきた車だったけど、すれ違い様に、覗いた窓の中には、たくさんのMIXの仲間達がいた。
「MIXの子も可愛いのに」
豆柴は、不満げに呟く。
「もしかしたら、逃げ出した方がいいかも」
僕は、みんなに目配せした。空腹のあまり、捕まった僕達だけど、どうも、この人間達は、怪しすぎる。火事場泥棒のように、純血統の僕らだけ集めて、どこかで、他の人に渡すつもりだ。
「譲渡会と称して、お金を取る奴らがいるらしいぜ」
向かい側のゲージのチワワの子が言う。
「飼い主さんに会いたい」
豆柴が呟く。僕の飼い主さん達は、どこにいってしまったのだろう。僕の兄弟達は、無事なのだろうか。ボスは?僕は、このまま、ここにいては、いけないと思った。隙を見て、ここから逃げ出し、大好きな人達に会うんだ。僕は、人間が、このゲージを開けさせようと思った。
車は、すっかり人通りの少なくなった大通りを抜け、山道に入った。僕らをどこに連れていくのか、クネクネと曲がった山道を抜けて、太陽が沈みかけた頃、ようやく、人気のある街にたどり着いた。そろそろ休憩するのか、車は、コンビニの駐車場へと入っていった。飼い主さん達や母と出かける時に、よく、休憩に立ち寄っていた。母は、
「飼い主さん達は、ここで、水分を摂ったり、排泄に行くのよ」
と言うのを、不思議な思いで聴いていた。きっと、ここで、この車の人達は、休憩するに違いない。僕は、ゲージの中で、腹を出して寝そべった。前足や、後ろ足を天井に向け、口から泡を出し、前足や後ろ足を痙攣させる。
「おい!見ろ!」
後部を除いた運転手達が、僕の姿を見て、顔色を変えた。トランクを開け、ゲージの扉に手を掛ける。
「今だ!」
僕は、運転手達が、扉を開けた瞬間、外の世界へと飛び出していた。
「あれ?」
僕は、首を傾げた。みんな汚れ痩せ細ってはいるが、不思議な事に、MIXの犬は、いなかった。みんなどこかのブリーダーから連れてこられた様な犬や猫達ばかりだった。
「不思議でしょう?」
僕の視線に気が付いたのか、隣のゲージにいる豆柴が答えてくれた。
「私の友達は、ここに入れてもらえなかったの」
「え?」
「もう、何日も食べ物がもらえなくて、困っていたの。食べ物を差し出されて、捕まってしまったけど、先に捕まった私の友人は、食べ物をもらっただけで、この車には、乗せてもらわなかったの」
「置いてこられたの?」
「そう」
僕は、用心深く、人間達の行動を見ていた。確かに、雑種の子達は、車に乗せていない。他の車とすれ違った。保護にきた車だったけど、すれ違い様に、覗いた窓の中には、たくさんのMIXの仲間達がいた。
「MIXの子も可愛いのに」
豆柴は、不満げに呟く。
「もしかしたら、逃げ出した方がいいかも」
僕は、みんなに目配せした。空腹のあまり、捕まった僕達だけど、どうも、この人間達は、怪しすぎる。火事場泥棒のように、純血統の僕らだけ集めて、どこかで、他の人に渡すつもりだ。
「譲渡会と称して、お金を取る奴らがいるらしいぜ」
向かい側のゲージのチワワの子が言う。
「飼い主さんに会いたい」
豆柴が呟く。僕の飼い主さん達は、どこにいってしまったのだろう。僕の兄弟達は、無事なのだろうか。ボスは?僕は、このまま、ここにいては、いけないと思った。隙を見て、ここから逃げ出し、大好きな人達に会うんだ。僕は、人間が、このゲージを開けさせようと思った。
車は、すっかり人通りの少なくなった大通りを抜け、山道に入った。僕らをどこに連れていくのか、クネクネと曲がった山道を抜けて、太陽が沈みかけた頃、ようやく、人気のある街にたどり着いた。そろそろ休憩するのか、車は、コンビニの駐車場へと入っていった。飼い主さん達や母と出かける時に、よく、休憩に立ち寄っていた。母は、
「飼い主さん達は、ここで、水分を摂ったり、排泄に行くのよ」
と言うのを、不思議な思いで聴いていた。きっと、ここで、この車の人達は、休憩するに違いない。僕は、ゲージの中で、腹を出して寝そべった。前足や、後ろ足を天井に向け、口から泡を出し、前足や後ろ足を痙攣させる。
「おい!見ろ!」
後部を除いた運転手達が、僕の姿を見て、顔色を変えた。トランクを開け、ゲージの扉に手を掛ける。
「今だ!」
僕は、運転手達が、扉を開けた瞬間、外の世界へと飛び出していた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
わたしのことがお嫌いなら、離縁してください~冷遇された妻は、過小評価されている~
絹乃
恋愛
伯爵夫人のフロレンシアは、夫からもメイドからも使用人以下の扱いを受けていた。どんなに離婚してほしいと夫に訴えても、認めてもらえない。夫は自分の愛人を屋敷に迎え、生まれてくる子供の世話すらもフロレンシアに押しつけようと画策する。地味で目立たないフロレンシアに、どんな価値があるか夫もメイドも知らずに。彼女を正しく理解しているのは騎士団の副団長エミリオと、王女のモニカだけだった。※番外編が別にあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる