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鎌鎌鎌鎌爺さん

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さて、お天気のいい朝は、婆様が憂鬱になる。爺様のデイサービスは、週に4回。限度額内目一杯で、デイサービスに行かされる。それは、婆様の負担を減らすのが、目的で、決して、爺様が行きたいと言っている訳ではない。が、憂鬱になるのは、お出かけ用のズボンの事だ。
「行ってダメだって!」
婆様が止めるのも、聞かず、爺様は、デイサービスの迎えにくるのが待てずに、裏の畑に出かけて行く。
「だから、ダメだって言ったのに」
婆様は、泣きそうになりながら、爺様のドロドロになったお出かけ用のズボンを交換する。せっかくの爺様の一張羅なのだ。
「一体、どこから持ってきたんだい?」
悲鳴をあげる。手には、どこからか、持ち出した鎌を持っている。
「うちのだ」
「違うでしょ!」
「俺のだ」
何処にでもある草刈り鎌だ。爺様は、鎌に執着する。あまりにも、どこの花でも木でも、切ってしまうので、自宅にある鎌は、隠しているのだが、何処からか持ってくる。
「何処から、持ってきたの?返してきなさい」
覚えている訳がない。
「うちのだ」
爺様が、デイサービスに行っている間に、ご近所さんを周り、返してくる。
「やっぱり、お宅の爺さまかい?」
と言われる。僕は、すごく、恥ずかしくなる。
「鎌鎌鎌鎌爺さん」
兄は、話を聞いて歌い出す。きっと、ご近所さんから、そう言われているよ。爺様。
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