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第38話:落ちてたパンツと、始まる嗅覚の受難
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早朝の教室には、まだ誰もいなかった。
カーテン越しに射し込む朝日、微かに残るモップの匂い、机の木材とプリント紙の香り。
僕、白井健太は自分の席に向かいながら、自然と鼻を動かしていた。
(今日は湿度が高い……香りがよく留まる日だ)
そう思いながら、自分の机に手をかける。
……ん?
(んん?)
机の上に、何かが丁寧に置かれている。
しかも、見覚えのある形状。
(……これ、パンツ……だよな)
しかも、畳んである。妙に丁寧に。
僕は本能的に周囲を見渡した。誰もいない。
廊下の足音もまだ遠い。
(これは、置かれた? 落とされた? なぜ僕の机の上に!?)
そのとき、背後から“カツン、カツン”と足音。
(ヤバい、担任来る!!)
反射的にパンツを掴み、ポケットに突っ込む。
次の瞬間、教室の扉が開き、担任の伊藤先生が入ってきた。
「おー、白井。おはよう。……お前、なんか顔赤くないか?」
「い、いえっ、特に何も、なんでも、ないです……」
「そうか? まぁいい、プリントだけ置いとけよー」
(ギリギリだった……!)
先生が去っていくと同時に、僕は深く息を吐き、ポケットに入れた“それ”を慎重に取り出す。
女子用パンツ。サイズはSかM。素材は綿とポリエステルの混合。
柔軟剤の香りではない。
僕は深く、慎重に、鼻を寄せる。
(……この香り、知ってる)
香水やボディミストではない。
柔軟剤特有の甘さや、洗剤のシャープさでもない。
もっと生々しくて、でも優しい。
体温の痕跡。
それは人が服を身につけ、過ごし、熱を帯び、そして汗や皮脂がほんのわずか残ったときだけ現れる“香りの記憶”。
(この香り……知ってる、でも“混ざってる”……)
僕は無意識に目を閉じた。
ミルクティー? 違う。
ウッディ? いや、もう少し酸味がある。
紅茶? でも抹茶っぽさも?
(決め手が、ない……)
……ただ、はっきりしていることがひとつある。
これは、この教室の誰かの香りだ。
しかも、おそらく“まだこの学校に慣れてない人物”。
なぜなら香りに余分な加工がなく、どこか“不安と緊張”のにおいが残っているから。
(つまり……新入生? 転校生?)
その瞬間、ドアが開いて、生徒たちが次々に入ってきた。
白神ルナがいつも通り爆音気味に元気な声を上げ、美月が無言で席に着き、紅葉が小さくうなずいて登場。
「よっ、しらけん。朝から顔赤いぞ?」
ルナの軽口に答えながら、僕はパンツの重みをポケットに感じていた。
(……持ち主を探す。俺の嗅覚で)
青春ラブコメ?
違う、これはパンツと正義の嗅覚の物語だ。
――始まった。
パンツの香りを巡る、僕の受難の日々が。
カーテン越しに射し込む朝日、微かに残るモップの匂い、机の木材とプリント紙の香り。
僕、白井健太は自分の席に向かいながら、自然と鼻を動かしていた。
(今日は湿度が高い……香りがよく留まる日だ)
そう思いながら、自分の机に手をかける。
……ん?
(んん?)
机の上に、何かが丁寧に置かれている。
しかも、見覚えのある形状。
(……これ、パンツ……だよな)
しかも、畳んである。妙に丁寧に。
僕は本能的に周囲を見渡した。誰もいない。
廊下の足音もまだ遠い。
(これは、置かれた? 落とされた? なぜ僕の机の上に!?)
そのとき、背後から“カツン、カツン”と足音。
(ヤバい、担任来る!!)
反射的にパンツを掴み、ポケットに突っ込む。
次の瞬間、教室の扉が開き、担任の伊藤先生が入ってきた。
「おー、白井。おはよう。……お前、なんか顔赤くないか?」
「い、いえっ、特に何も、なんでも、ないです……」
「そうか? まぁいい、プリントだけ置いとけよー」
(ギリギリだった……!)
先生が去っていくと同時に、僕は深く息を吐き、ポケットに入れた“それ”を慎重に取り出す。
女子用パンツ。サイズはSかM。素材は綿とポリエステルの混合。
柔軟剤の香りではない。
僕は深く、慎重に、鼻を寄せる。
(……この香り、知ってる)
香水やボディミストではない。
柔軟剤特有の甘さや、洗剤のシャープさでもない。
もっと生々しくて、でも優しい。
体温の痕跡。
それは人が服を身につけ、過ごし、熱を帯び、そして汗や皮脂がほんのわずか残ったときだけ現れる“香りの記憶”。
(この香り……知ってる、でも“混ざってる”……)
僕は無意識に目を閉じた。
ミルクティー? 違う。
ウッディ? いや、もう少し酸味がある。
紅茶? でも抹茶っぽさも?
(決め手が、ない……)
……ただ、はっきりしていることがひとつある。
これは、この教室の誰かの香りだ。
しかも、おそらく“まだこの学校に慣れてない人物”。
なぜなら香りに余分な加工がなく、どこか“不安と緊張”のにおいが残っているから。
(つまり……新入生? 転校生?)
その瞬間、ドアが開いて、生徒たちが次々に入ってきた。
白神ルナがいつも通り爆音気味に元気な声を上げ、美月が無言で席に着き、紅葉が小さくうなずいて登場。
「よっ、しらけん。朝から顔赤いぞ?」
ルナの軽口に答えながら、僕はパンツの重みをポケットに感じていた。
(……持ち主を探す。俺の嗅覚で)
青春ラブコメ?
違う、これはパンツと正義の嗅覚の物語だ。
――始まった。
パンツの香りを巡る、僕の受難の日々が。
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