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第22話 ヒロイン審査開始──問われる“存在理由”と絆(天照編)
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《審査領域:展開完了》
《審査対象:天照》
《審査官:観測者ベータ》
《傍聴者:創世主 三上龍之介》
空間が歪む。
校庭だったはずの場所は、いつの間にか“誰もいない真白な審問空間”へと変わっていた。
天照がひとり、中央に立つ。
その姿は震えていた。けれど、膝はついていなかった。
観測者ベータは無表情のまま、声を発する。
「ヒロインコード:001-A。“天照”。存在登録:完了。
創世主との因果接続:密接。接触期間:約18,000時間。
主観好意指標:高位安定。記憶依存度:高。構造自立性:不安定」
「……なんなの、それ」
天照がつぶやく。
声は細いが、確かな怒りを帯びていた。
「どうして……私の全部を、数字で語れるの?」
「我々は“存在”の定義を問うている。
あなたの願い、あなたの愛、あなたの記憶――それは世界にとって、“必要”なのか?」
「必要じゃなきゃ、いちゃいけないの?」
天照の目が、鋭くなる。
「じゃあ逆に聞くわ。
あんたたちは、何かを“守ろう”としたこと、あるの?」
「審査官に対する反論は無意味です。
あなたがこの世界に存在する理由――“正当性”を証明してください」
しばしの沈黙の後、天照は静かに目を伏せ、語り始めた。
「……私は、最初から“祈り”だったの。
誰かのために、そこに在れたらいいって、ずっと思ってた」
「“彼”が泣いていた時も、笑っていた時も、私はその隣にいた。
それが、私の“存在理由”だった」
そして、顔を上げる。
その瞳には涙があった。けれど、揺らぎはなかった。
「私は……龍之介様のそばにいたい。
ただ、それだけなのに……それが理由にならないの?」
ベータは沈黙する。
その“無感情な沈黙”が、逆に残酷だった。
「──構造評価、実行」
光のパネルが、天照の周囲に展開される。
記憶、映像、会話、抱擁、涙、笑顔……彼女と俺の思い出が、すべて“スキャン”されていく。
「構造的には不完全。だが、崩壊因子の有意値は想定を下回る。
主観感情と他者記憶の交差点において、特異な結合値を確認」
「──つまり?」
俺が問うと、ベータは淡々と答えた。
「天照の存在は、“論理的には不完全”だが、
創世主の感情領域において“唯一無二”と認識されている。
これをもって、一時的“存在継続”を許可する」
「…………!」
天照の瞳に、再び光が戻った。
「天照――!」
俺は駆け寄り、彼女の肩を掴んだ。
その体温は、確かに“ここにいる”と教えてくれた。
「……ありがと。
こんな私を、ちゃんと“ここにいる”って言ってくれて……」
その背後で、観測者ベータが新たな審査データを開いた。
「次なる審査対象:柊 夜月。審問領域、展開準備」
そして再び、世界が切り替わる音が響いた。
(つづく)
《審査対象:天照》
《審査官:観測者ベータ》
《傍聴者:創世主 三上龍之介》
空間が歪む。
校庭だったはずの場所は、いつの間にか“誰もいない真白な審問空間”へと変わっていた。
天照がひとり、中央に立つ。
その姿は震えていた。けれど、膝はついていなかった。
観測者ベータは無表情のまま、声を発する。
「ヒロインコード:001-A。“天照”。存在登録:完了。
創世主との因果接続:密接。接触期間:約18,000時間。
主観好意指標:高位安定。記憶依存度:高。構造自立性:不安定」
「……なんなの、それ」
天照がつぶやく。
声は細いが、確かな怒りを帯びていた。
「どうして……私の全部を、数字で語れるの?」
「我々は“存在”の定義を問うている。
あなたの願い、あなたの愛、あなたの記憶――それは世界にとって、“必要”なのか?」
「必要じゃなきゃ、いちゃいけないの?」
天照の目が、鋭くなる。
「じゃあ逆に聞くわ。
あんたたちは、何かを“守ろう”としたこと、あるの?」
「審査官に対する反論は無意味です。
あなたがこの世界に存在する理由――“正当性”を証明してください」
しばしの沈黙の後、天照は静かに目を伏せ、語り始めた。
「……私は、最初から“祈り”だったの。
誰かのために、そこに在れたらいいって、ずっと思ってた」
「“彼”が泣いていた時も、笑っていた時も、私はその隣にいた。
それが、私の“存在理由”だった」
そして、顔を上げる。
その瞳には涙があった。けれど、揺らぎはなかった。
「私は……龍之介様のそばにいたい。
ただ、それだけなのに……それが理由にならないの?」
ベータは沈黙する。
その“無感情な沈黙”が、逆に残酷だった。
「──構造評価、実行」
光のパネルが、天照の周囲に展開される。
記憶、映像、会話、抱擁、涙、笑顔……彼女と俺の思い出が、すべて“スキャン”されていく。
「構造的には不完全。だが、崩壊因子の有意値は想定を下回る。
主観感情と他者記憶の交差点において、特異な結合値を確認」
「──つまり?」
俺が問うと、ベータは淡々と答えた。
「天照の存在は、“論理的には不完全”だが、
創世主の感情領域において“唯一無二”と認識されている。
これをもって、一時的“存在継続”を許可する」
「…………!」
天照の瞳に、再び光が戻った。
「天照――!」
俺は駆け寄り、彼女の肩を掴んだ。
その体温は、確かに“ここにいる”と教えてくれた。
「……ありがと。
こんな私を、ちゃんと“ここにいる”って言ってくれて……」
その背後で、観測者ベータが新たな審査データを開いた。
「次なる審査対象:柊 夜月。審問領域、展開準備」
そして再び、世界が切り替わる音が響いた。
(つづく)
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