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第33話 はじめての“ライバル”──アリエル、恋を学びます
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「“好き”って、どこまでが“好き”なんでしょうか……?」
その問いに、教室中の空気が凍った。
昼休み、いつもの席。
文化祭以降すっかり馴染んだアリエルが、食後の団子を見つめながら放った“核弾頭”だった。
「え……なにその、哲学みたいな問いかけ」
夜月が箸を止め、レイナがメガネを押し上げる。
「観測データとしての“好き”は、接触頻度・脳波・心拍などで判断されますが、
……このケースは、完全に未定義領域ですね」
「つまり、“ときめき”という現象にバグが生じてるってこと!」
「だからバグ呼ばわりやめろって!」
天照が、静かに口を開いた。
「アリエルさん。もしよろしければ……私たちから、“恋”について教えましょうか」
「っ!」
アリエルがぴょこんと背筋を伸ばす。
「えっ、それは、もしや……恋愛特別講義というやつですか!?」
「名前だけは一丁前に覚えたな、お前……」
*
放課後。図書室・特設“ヒロイン研修ブース”。
「第1項。“好き”は、気づいた瞬間から始まる」
ホワイトボードの前に立つのは、天照。
背後には、“ときめきとは何か”のキーワードが美しい文字で書き連ねられている。
「“そばにいたい”という感情、“独占したい”という欲求、
“触れたい”“見つめたい”……その全部が、“好き”の芽です」
アリエルは、メモ帳片手に真剣に聞いていた。
「じゃあ第2項。“好き”は、ライバルの数だけ燃え上がる」
夜月が椅子の背に脚をかけて語る。
「つまり!あたしたち全員が“龍之介”を好きって公言してるから、
お前も自覚した瞬間から、正真正銘のライバル入りだ!」
「ら、ライバル……!」
「歓迎するよー!愛と殺意の綱引きへ!」
「言い方やめろユヅリハ!!」
「そして第3項。“好き”は、痛い」
静かに言ったのは、レイナだった。
「報われるとは限らない。伝わるとも限らない。
でも、だからこそ尊いの。“好き”は、戦いです」
「戦い……恋とは……戦場だったんですね……!」
完全に目が輝いてしまったアリエルに、全員が微妙な顔をする。
「でも、アリエルちゃんはアリエルちゃんの“好き”を見つければいいよ!」
ユヅリハが笑ってそう言ったとき、アリエルはそっと口元に手を添えた。
「じゃあ……私、もっと“近づきたい”です。
龍之介さんのこと、“もっと知りたい”です」
それは、確かに芽生えた感情だった。
それを“好き”と呼ぶには、もう――何の不足もなかった。
(つづく)
その問いに、教室中の空気が凍った。
昼休み、いつもの席。
文化祭以降すっかり馴染んだアリエルが、食後の団子を見つめながら放った“核弾頭”だった。
「え……なにその、哲学みたいな問いかけ」
夜月が箸を止め、レイナがメガネを押し上げる。
「観測データとしての“好き”は、接触頻度・脳波・心拍などで判断されますが、
……このケースは、完全に未定義領域ですね」
「つまり、“ときめき”という現象にバグが生じてるってこと!」
「だからバグ呼ばわりやめろって!」
天照が、静かに口を開いた。
「アリエルさん。もしよろしければ……私たちから、“恋”について教えましょうか」
「っ!」
アリエルがぴょこんと背筋を伸ばす。
「えっ、それは、もしや……恋愛特別講義というやつですか!?」
「名前だけは一丁前に覚えたな、お前……」
*
放課後。図書室・特設“ヒロイン研修ブース”。
「第1項。“好き”は、気づいた瞬間から始まる」
ホワイトボードの前に立つのは、天照。
背後には、“ときめきとは何か”のキーワードが美しい文字で書き連ねられている。
「“そばにいたい”という感情、“独占したい”という欲求、
“触れたい”“見つめたい”……その全部が、“好き”の芽です」
アリエルは、メモ帳片手に真剣に聞いていた。
「じゃあ第2項。“好き”は、ライバルの数だけ燃え上がる」
夜月が椅子の背に脚をかけて語る。
「つまり!あたしたち全員が“龍之介”を好きって公言してるから、
お前も自覚した瞬間から、正真正銘のライバル入りだ!」
「ら、ライバル……!」
「歓迎するよー!愛と殺意の綱引きへ!」
「言い方やめろユヅリハ!!」
「そして第3項。“好き”は、痛い」
静かに言ったのは、レイナだった。
「報われるとは限らない。伝わるとも限らない。
でも、だからこそ尊いの。“好き”は、戦いです」
「戦い……恋とは……戦場だったんですね……!」
完全に目が輝いてしまったアリエルに、全員が微妙な顔をする。
「でも、アリエルちゃんはアリエルちゃんの“好き”を見つければいいよ!」
ユヅリハが笑ってそう言ったとき、アリエルはそっと口元に手を添えた。
「じゃあ……私、もっと“近づきたい”です。
龍之介さんのこと、“もっと知りたい”です」
それは、確かに芽生えた感情だった。
それを“好き”と呼ぶには、もう――何の不足もなかった。
(つづく)
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