同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第九十三話 恋人の座争奪戦・第二陣

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翌晩——

 俺は、正座していた。
 布団の上で、ぴしっと背筋を伸ばして。

 なぜなら、
 “恋人の座争奪戦”第二陣の相手が、

「ふふ……“静かな夜”をご所望ですか、真壁さま?」

 王女・イザベラ・アーデンだからである。

 振袖のような和装に身を包み、完璧に整えられた姿で部屋へ現れた彼女は、まるで“正月の女神”のようだった。

「こちら、お作法通りに煎れた玉露です。
 どうぞ、お口に合いますように」

 俺は一口飲んで、思った。
 この人、隙がなさすぎる……!

「今夜の私のテーマは“真壁さまの隣に最もふさわしい人間であること”です。
 よろしければ、過去のご恩に感謝を込めて——足揉みでもいたしましょうか?」

「お、それはちょっと嬉しいかも……いや違う、恋人っぽいことをするんじゃ……」

「それならば」

 イザベラはすっと距離を詰め、俺の右肩に体を預けてくる。
 その瞬間、花のような香りがふわりと鼻をくすぐった。

「こうして寄り添う時間が、恋人らしさなのではありませんか?」

 この人……天然で攻めてくる!?

「真壁さま」

「な、なんですか……?」

「私のことを、異国の姫君としてではなく、一人の女性として見ていただけたら……それだけで、私は——」

 そこまで言いかけたとき——

 ドアの外から、“ぴた、ぴた”と足音。

 そして——

「失礼しまーす!」

 すぱーん! と襖を開けて入ってきたのは、ひより。

「な、なんで! 今、順番——」

「ルナ先輩が“次は私”って言ってましたけど、私はその“次”です。
 つまり“第二陣B枠”です」

「そんなの聞いてない!」

「記録には残しておきました」

 手には例の“観察ノート”。
 ひよりは、にこりともせず俺の隣にすとんと座ると、メモを取り始めた。

「本日の観察:距離感、約10cm。
 イザベラさんの寄り添い行動に対し、真壁くんの心拍変動——軽く赤面。
 ……好意的反応、認定」

「な、なんでそこまで——!」

「私は、誰よりも“事実”を見ていますから」

 観察という名の好意の告白。 そしてイザベラの正統派・王女ムーブ。

 静かに、でも激しく火花が散る第二陣。

 俺の部屋の気温は、エアコンなしで2℃ほど上昇した。

(つづく)

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