同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第一〇七話 封印を解かれし者──中二病ヒロイン、参上!

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 放課後。

 俺は廊下の隅で、ひそかに溜息をついていた。
 闇部活《真壁弘弥を愛する会》に痴女系まで加わり、家では妹が怒涛の警戒態勢を敷いている。
 静かに生きたい、そう願う俺の理想は、日々崩壊していた。

「——見つけた」

 突如、背後から響く低く伸びやかな声。

 振り返ると、黒のロングコートをひるがえし、肩までの髪を風に乗せる少女が、窓際に立っていた。

 彼女の名は——

「我が名は、《氷闇ノ凍咎(ひょうあんのいてざわ)》……だが、貴様には“朱鷺坂ユナ”と呼ばれし記憶があるかもしれんな」

「……え、何……?」

「よい。この封印されし左眼が疼いたのだ。貴様の背に宿る、時空の歪みと、少女たちの欲望の渦を感じてな……」

 眼帯で隠された左目に手を当て、彼女は陶然と呟いた。

 俺の隣に立っていたひよりが、小声でメモを取る。

「新たな観察対象候補、コードネーム“異能覚醒型”。感情曲線、不規則……面白い」

 碧純も現れ、遠巻きに少女を見つめたまま囁いた。

「……なに、この人。怖いんだけど……」

 少女はおもむろにポケットから何かを取り出した。
 それは——黒い羽根つきの手帳だった。

「真壁弘弥。貴様の魂は、かつて我と契約した因果に触れている」

「いや、全然記憶にないし、契約もした覚えないし!?」

 彼女は一歩近づいてきた。

「“かつての盟約者”を、この学園で再び見つけるとは……やはり定めは一つに収束するというのか」

 ひより:「観察ログに“予知的確信型ポエム”と記載」

 俺:「記載しないで!!!」

 少女——朱鷺坂ユナ(と名乗った彼女)は、黒マントの裾を翻し、俺の手に何かを握らせた。

 それは、ペンで模様の書かれた小さな“契約書”。

「これより貴様の魂は、我が術式《くすぐりの呪縛》によって守られる」

 おそらく彼女の“くすぐりの呪縛”とは——冗談の範囲だと信じたい。

「今こそ、運命の輪は動き出した……ふふふ、ふふはははは!!」

 静寂の廊下に、高笑いが響いた。

(また一人、強烈なヒロインが増えた気がする……)

(つづく)
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