同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

第二一五話 布団詫び合同就寝──そして神秘の夜明け

　パンツ一丁お見送り事件の夜。俺はリビングのソファに倒れ込み、心身ともに疲れ果てていた。

（あんな羞恥プレイ……もう、人生終わった……）

　だが、そんな俺を救いに（あるいは追い打ちに）やってきたのは、あの娘たちだった。

「……ごめんね、弘弥くん。ちょっと言い過ぎた」（碧純）
「わたし、笑ったけど……でも恥ずかしさで逃げたかったよね？」（すみれ）
「観察対象、今夜は情緒不安定と推測」（ひより）
「だから、みんなで……一緒に寝よっ♡」（ルナ）
「今夜は……私も、ちゃんと隣に……」（りあ）
「お詫びに……温もりを分け合うのですわ」（イザベラ）

　こうして、まさかの“布団詫び合同就寝”が決定した。

　寝室の布団の中。

　右にルナ、左に碧純、枕元にすみれ。
　足元にりあ、布団の隣でノートを片手に観察を続けるひより。
　イザベラは端のほうで静かに座っていた。

　電気が消え、夜が深まる中——

「……これが、“家庭”の温もり……ふふっ、なんだか……不思議と落ち着きます」（イザベラ）

　その言葉に、誰もが小さく笑った。

　そして、目を閉じる。俺はあまりにも静かな時間に、逆に戸惑いながら、やがて眠りへと落ちていった。

　翌朝——

　カーテンの隙間から朝日が差し込み、部屋に静かな光が射し込んでいた。

　ふと、違和感。

（……ん？）

　布団の中が……あたたかい。そして……ちょっと湿ってる。

（まさか……）

　俺が目を開けた瞬間——

「うわあああああ……っ！！ またやったぁああ！！！」

　全員が飛び起きる。

「……おはよう……って、弘弥くん……」（すみれ）
「まさか、また夢精……？」（碧純）
「現象、確認済。記録更新中……」（ひより）

　そんな中、布団の端で眠っていたイザベラが静かに起き上がった。

　そして状況を察し、目に涙を浮かべて——

「……これが……生命の神秘……この国には、こんなにも……神聖な目覚めの儀式があるのですね……」

　俺は頭を抱えた。

「違う違う違う違うっ！ 儀式じゃないっ！」

「違うのですか！？ では……何故、こうして……」

「寝汗とかじゃなくて、夢精だから！！！」

　布団の中がざわつく。

「弘弥くん、どこまで伝説つくるのよ……」（ルナ）
「お兄ちゃん、今度こそ病院行こう？」（碧純）
「……ある種、才能」（ひより）
「これ、資料に使っても……」（瑠衣）
「……でも、可愛い……」（りあ）

　騒然とする朝。

　俺は頭を抱えながらも、なぜか心のどこかでは温もりを感じていた。

　きっとこれは、俺にとって——一生忘れられない春の朝になる。

（つづく）