同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第二四三話「告白の演技、嘘と本音──ヒロインたちのガチ演技バトル」

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体育館のステージは、静かだった。

しかし、その静寂の裏に隠された空気は──完全に戦場。

 

「それでは、脚本中・終盤の“告白シーン”、オーディションを開始します」

 

学級委員の号令が響きわたる。

舞台中央に立つ俺・真壁弘弥。
向かい合う“ヒロイン役立候補者”たち。

 

順番に、ステージに立ち、
俺と“目を合わせ”、
“愛のセリフ”を口にし──

 

本気で落としにくる。

 

◆ ◆ ◆

 

【エントリーNo.1 水無瀬すみれ】

 

すみれ先輩は、静かに歩いてきて、俺の前に立った。
その目には迷いがなかった。

 

「……あなたの書いたセリフ、好きです。……でも」

 

手元の脚本を閉じ、ゆっくりと捨てた。

 

「わたしは──“自分の言葉”で伝えます。」

 

「好きです、弘弥くん。誰かのヒロインとしてじゃなく、“わたし”として、隣にいたい」

 

──あまりにも、真っ直ぐだった。

演技にしては完成されすぎていて。
台詞にしては生々しすぎて。

 

拍手。
ざわめき。

 

「……あ、あれ、ちょっと、本気じゃね? すみれ先輩……」

「完全に告白じゃん……ガチ告白だよ、あれ」

 

 

【エントリーNo.2 白神ルナ】

 

ルナは、軽やかな足取りで現れた。

 

「ねーねー、弘弥ぁ。あたしのこと、どう思ってんの?」

 

いきなり、アドリブ全開。

 

「好き? 嫌い? “幼馴染キャラ”として? それとも……女として?」

 

最後の言葉の直前、俺の制服の胸を、ぐいっと引き寄せた。

唇が──ほんの1センチまで近づく。

 

「“あたしとキスするとこ”、演技でできる……?」

 

「ひ、ひょえええぇぇぇっっっ!!!」

 

崩れ落ちる俺。

体育館、爆笑とどよめきと悲鳴の嵐。

 

 

【エントリーNo.3 一ノ瀬ひより】

 

「このオーディションにおける、対象個体の心拍数変動を記録し、最も有効な告白パターンを推定した結果──」

 

「“これ”です」

 

ひよりは無表情のまま俺の手を取り、スピーカーの前で──

 

「すき。もう、ずっと、観察してたけど──観察じゃ足りなくなっちゃった」

 

呟き、静かに立ち去った。

 

その後。

 

「真壁くん、涙目で硬直してる……」

「体温上昇、顔真っ赤……完全に効いてるじゃん、あれ……」

 

 

【エントリーNo.4 黒瀬りあ】

 

りあは、笑っていた。

でも、その笑顔の奥には、“覚悟”があった。

 

「ねぇ、弘弥くん。わたしはね、ずっと“あなたの物語の一部”でいたかったの」

 

「でも、もう我慢できない。だから──」

 

俺の手を握り、そっと額を寄せてきた。

 

「“わたしをヒロインにして”。お願い、弘弥くん。……現実でも」

 

演技にしては震えすぎていた。

でも、涙は止まらなかった。

 

「うわ……あれ、本物だ……」

「これは……キツい……心が……」

 

 

【エントリーNo.5 イザベラ・アーデン】

 

舞台の空気が、一瞬で変わった。

 

「──わたくしの役目は、貴方に愛を捧げることです。どのような脚本であろうとも、それは“演技”ではありません」

 

王族としての凛とした姿勢を崩さず、しかし声はやさしく震えていた。

 

「貴方の書いたその物語に、わたくしは……本気で恋をしました」

 

 

◆ ◆ ◆

 

全員、演技じゃなかった。

言葉の端々に、震えと真剣さが滲んでいた。

もうこれは、告白合戦そのものだった。

 

 

──と思ったそのとき。

 

「……“最後のエントリー”、忘れてない?」

 

えっ?

 

振り向いた先にいたのは──

 

黒沢先生(ガチの教員・29歳・推しガチ恋)

 

「ま、真壁くんの脚本に、私が感情移入しないわけないでしょ? “最年長のヒロイン”、見せてあげる」

 

スーツのジャケットを脱ぎ、
リップを塗り、
高ヒールをカツン、と響かせながら歩み寄ってくる。

 

「“先生”、ずっと応援してたの。あなたの言葉に、勇気をもらって、救われて……それでも、追いつけなくて──」

 

「だから、今だけは。台本じゃなく、わたしの本心で言うね」

 

先生は、俺の胸に手を当てて、
真っ直ぐ目を見て、言った。

 

「あなたの物語の中に、“わたし”を入れてくれない?」

 

 

……体育館、騒然。

女子たち全員、沈黙。
男子たち全員、笑いを堪えながら震える。

 

「す、すごい……先生、空気読まずに突っ込んできた……!」

「いや、むしろ空気ぶち壊した……!」

「でも、セリフだけは一番重かった……!妙にエモい!」

 

 

そして。

 

「真壁くん──さあ、“誰をヒロインにする”?」

 

 

選ばなければならない。

たったひとりの、“舞台のヒロイン”を。
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