同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第四三九話 「靴下の香り、測ってみませんか?」

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──それは、編集者・久遠美月の思いつきから始まった。

「弘弥くん。“恋”と“靴下”をテーマに書くならさ、科学的根拠が欲しいのよ」

「……嫌な予感しかしない」

「というわけで、臭気判定士を呼んでおいたわ♡」

「呼んでおいたってどういうこと!? “くん呼び”で頼むような人材じゃないでしょ!?」

◆ ◆ ◆

【臭気判定士・来訪】

現れたのは白衣を着た、妙に真面目な顔の男性。

「……では、開始しましょう。香気サンプルは……こちらですね」

机の上には、ジップロックに封入されたヒロインたちの“使用済み靴下”がズラリと並んでいた。

弘弥:「なにこれ!?圧がヤバいんだけど!」

ことね:「全部、個別パッケージで提出しました♡ 配信にも使えるので」

すみれ:「三時間着用・制服使用・無香料洗剤使用済。条件は揃えてあります」

ルナ:「あたしのだけ“体育後”仕様だから! そこんとこよろしく!」

あゆむ:「私のは“休日ダラダラ部屋着+こたつ”仕立てです♡」

碧純:「洗いたてじゃ味気ないから……ちょっと寝巻きブーツ履いて湿らせておいたよ」

弘弥:「お前ら、作品より臭いに命かけてない!?!?!?」

◆ ◆ ◆

【香気測定開始】

臭気判定士が一つ一つ、靴下に電子センサーを近づけていく。

ピッ……ピピッ……ピィィイイイイ!!

「……これは、強いですね。**“POD指数”(パンティー・オドール・ディフュージョン)で80越えです」
「明確に“嗅覚系恋情刺激値”が跳ねてます」

弘弥:「もう専門用語が一周回ってポエムに聞こえるんですが!?」

美月:「これが文学。匂いは、恋の伏線……」

◆ ◆ ◆

【ついに、判定終了】

「それでは発表します」

判定士が、厳かにスコアボードを掲げる。

第1位:ルナ(POD指数:89.6)
第2位:ことね(86.4)
第3位:すみれ(85.3)
第4位:碧純(83.2)
第5位:あゆむ(82.9)

「ということで、“フェロモン女王”は──白神ルナさんです!」

\ぱちぱちぱちぱち……!/

ルナ:「はい優勝~~~~!! ねぇ弘弥、どう?あたしの“愛の蒸れ”♡」

弘弥:「愛とか言うなあああああああああ!!!!」

◆ ◆ ◆

すみれ:「でも……たしかに、ルナちゃんの香り、ちょっと癖になるかも」

ことね:「私も次は“二日間連続使用+密封保管”でリベンジします」

碧純:「次回に向けて、食生活から改善しなきゃ……!」

あゆむ:「“フェロモン王女”の座、必ず奪還してみせます♡」

弘弥:「なんで!?なんでそんなにやる気あんの!?!?!?」

◆ ◆ ◆

美月:「というわけで弘弥くん、“香りと恋と靴下”をテーマにしたコラムを一万字でよろしくね」

弘弥:「今世紀最大のブラック企業編集者か!?」

◆ ◆ ◆

──だが。

俺は気づいてしまった。

この騒動があったからこそ、“靴下と恋の物語”に命が宿ったことを。

『香りの記憶は、たぶん、初恋に一番近い。』

そう、キーボードを打ちながら、俺は心の中で呟いていた。
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