『親王だけど、バレずに萌え活したいだけなのに女子に囲まれてる件』 〜茨城県つくば市で始まる、親王殿下の秋葉原文化潜入ライフ〜

本能寺から始める常陸之介寛浩

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【第53話】 温泉旅館で大事件!? 女湯VSくノ一VS王女

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 旅行2日目。
 心斎橋のスイートルームでの一夜を終えた武尊は、朝の光に包まれたホテルの窓辺で深いため息をついていた。

「まさか、スイートルームでVTuberのグッズ抱いて寝ることになるとは……」

 寝不足の目元に濃く入ったクマ。
 そんな彼のもとへ、イザベラが優雅に朝食を持ってやってきた。

「本日は、京都方面に足を運ぶプランですわよ? もちろん、お宿はわたくしが手配いたしました♡」

「……え、また!? い、いや、ありがたいけど、その……え?」

「“殿下が満足できる和風の癒やし”を、と思いまして。有馬温泉風の老舗旅館でございますの!」

 隣室では、千夏がタオルを振り回しながら叫んでいた。

「おいコラぁ!! なんでまた全員で一緒に動く流れになってんだァ!!」

「仕方ないでしょ……気になるし」
 ことねがスッとスマホを見ながらつぶやく。

 ──旅行先でも、日常は修羅場である。

 * * *

 午後。
 古都・京都。

 イザベラの専用車が向かった先は、山間にひっそりと佇む和風旅館『静香の宿 花鳥風月』。

 本物の数寄屋造り。
 玄関では仲居が深々と頭を下げ、通された部屋はなんと“展望露天風呂つき離れ”だった。

「おい……高い……絶対高いぞここ……」
 千夏が旅館の天井を睨む。

「こんなとこ、庶民が泊まる場所じゃねーよ……」

「殿下の疲れを癒やすにはこれくらい当然ですわ♡」
 イザベラが扇子を閉じながら微笑む。

「“萌え活の疲労”を癒やすための宿泊って意味がわかんないんだけど……」
 ことねのツッコミが止まらない。

 だが──それ以上に緊迫した空気が流れていた。

「女湯、入りに行くわよ」

 イザベラが先陣を切った。

「はぁ!? いきなり!?」

「“温泉は乙女の戦場”って、どこかの恋愛漫画に書いてましたわ!」

「それマンガの読みすぎ……」

 しかし、千夏もことねも、なぜか「断る理由」が見つからず、続いて脱衣所へ。

 ──女湯。

 湯気の立ちこめる大浴場に、三人のシルエットが浮かぶ。

「ねぇ、そろそろハッキリさせない? 誰が一番、武尊のこと知ってるか」

 千夏の火花が散る。

「それは私でしょ。中の人視点で言えば──」

「中の人って何のことですの?」
 イザベラがクスリと笑う。

「殿下は、わたくしの未来の婚約者ですもの♡」

「……誰がいつ決めたんだよその話!?💢」
「だいたい、温泉で“殿下”とか言うなって……!!」

 ドゴォォォン!!
 洗面器が湯に落ちた音が、まるで戦の号砲のようだった。

 * * *

 一方、別室。

 睦月、小春、如月のくノ一護衛トリオは、円座になって作戦会議中だった。

「……あの三人の女湯での空気、尋常じゃないです」

 如月が屋根裏から取得した“音声情報”を淡々と報告。

「本来の任務は殿下の安全の確保ですけど……正妻戦争が本格化してますね」
 小春が湯呑みを握りしめる。

「それに……」
 小春がもじもじと呟いた。

「ねえ、睦月……私たちも、殿下のお背中……流したい、よね?」

「…………」

「「………………」」

 ──時が、止まった。

「つまり、それは“湯上がり決戦”を宣言するということでよろしいですね」

 睦月が立ち上がると同時に、全員が一斉に「作戦・湯煙の誓い」を確認した。

「殿下に怪我ひとつ負わせない。それと、誰にも渡さない」
 如月が刀を見つめる。

 小春:「私、今回は負けません!」
 睦月:「では──出陣しましょう」

 * * *

 男湯。
 タオル一枚で湯に浸かる武尊。

「俺は……ただ、推しのカフェに行きたかっただけなのに……」

 空を仰ぐ。

 風呂の湯けむりの向こう、天井に滲む灯りが、彼の心を癒やすどころか逆に焦らせる。

(このままじゃ、絶対に平穏なオタ活生活に戻れない……!)

 そのとき──

 脱衣所のドアが、音もなく、開いた。

「殿下。お背中、お流しします」

「えっ……!?お、おい、ちょっ……ま──!!??」

 ──こうして温泉宿の夜は、
 “背中流しバトルロイヤル”と化すのだった──
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