『親王だけど、バレずに萌え活したいだけなのに女子に囲まれてる件』 〜茨城県つくば市で始まる、親王殿下の秋葉原文化潜入ライフ〜

本能寺から始める常陸之介寛浩

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【第56話】 そして、誰も選べなかった──帰路と再開宣言

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 京都駅、東海道新幹線・のぞみの発車ベルが鳴っていた。

 構内に流れる女性アナウンスと、かすかに聞こえる発車メロディ。
 スーツケースを引く旅行客と修学旅行の学生たち。
 そのど真ん中で――俺は、ラブコメのど真ん中にいた。

「で、結局どうするんだよ。あたしらの気持ちにはっきり答えねぇまま帰るつもりか?」
 千夏が腕を組んで、鋭く睨んでくる。

「答えなんて簡単に出せるわけないでしょ……」
 ことねは俯き、髪の隙間からちらりと目を向けてきた。

「ですが、殿下。女心は“即断即決”の誠意を尊びますのよ♡」
 イザベラはにこやかに、しかしその奥に確かな“王女の威圧感”を込めていた。

 正直、今ここで誰かを選ぶなんて――無理だった。

 この旅の三日間、どの子も、それぞれの想いをぶつけてきた。
 自分の立場も、正体も、萌え活も、全部かけて――俺に。

「……ごめん」
 言葉を吐き出すように、口から落ちた。

「まだ、選べない」

 三人の間に、微かな風が吹いた。
 新幹線がホームに入ってくる音と重なって、世界が静かになる。

「そっか」
 ことねが小さく微笑んだ。

「……じゃあ、これから選ばせてあげる」
 その瞳に浮かぶのは、諦めじゃない。“覚悟”だった。

「殿下がどれだけ逃げようと……この勝負、私が勝つつもりですわ♡」
 イザベラが扇子をパタンと閉じ、ウィンクを送ってくる。

「覚悟しろよ、大和武尊」
 千夏が背中を軽く叩いた。「次に会う時は、ラブじゃなくてファイトだかんな」

「え、なんで戦う前提なの……?」
 思わず呟いてしまった俺に、三人のヒロインが一斉に振り返る。

「「「当然でしょ?」」」

 新幹線のドアが開いた。

「じゃ、また学校でな。次の戦場は……日常だ」
 千夏が手を挙げて乗り込む。

 ことねもスーツケースを引いて、
「私、あなたがどんな答え出すか、楽しみにしてる」
 と、振り返って微笑んでくれた。

「次会った時、また“推し活”語りましょうね♡」
 イザベラがくるりとターンして車内に消えていく。

 俺はその背中を見送りながら、駅売店の紙袋をギュッと握りしめた。

 中には、大阪限定コラボカフェのアクリルスタンドと、秋葉原の戦利品。

 萌え活と、現実と、恋心と。

 全部、全部、俺の大事な“日常”。

「……俺の“萌え活”、まだまだ続くってことだな」

 空を見上げた。
 どこまでも高く、青く、まぶしい空。

 旅は終わった。でも、俺のラブコメは、これからだ――
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