『親王だけど、バレずに萌え活したいだけなのに女子に囲まれてる件』 〜茨城県つくば市で始まる、親王殿下の秋葉原文化潜入ライフ〜

本能寺から始める常陸之介寛浩

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【第59話】 『朝のキッチン戦争──ごはん、味噌汁、そして愛情の味』

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 朝――。

 つくばの静かな住宅街にある、古びた二階建てアパート……の“ように見える”大和武尊の住まい。

 外見は築三十年以上、だが中身は国家予算レベルの防衛施設兼、超高機能ハーレム要塞である。

 そして今、そのキッチンでは……。

「な、なんだこの光景は……」

 武尊は、寝ぼけ眼を擦りながら唖然と立ち尽くしていた。

 目の前で繰り広げられていたのは――**早朝から繰り広げられる、ヒロインたちの“料理戦争”**だった。

「あんた、目玉焼きは半熟派か固焼き派か、どっちだ?」

 千夏がフライパンを振りながら聞いてくる。
 今日の装いはパーカーにスウェットという、完全家庭モード。

 武尊が言葉を発する前に、ガツンと目玉焼きが皿に着地した。

「まあいい、両方作った。選べ」

「……これが、わたしの朝食です」

 ことねが差し出したのは、小ぶりな和風弁当。

 卵焼き、梅干し、ほうれん草のお浸し、そして手書きのラベルには──

【本日の日替わり:しじみの味噌汁付き】

「……これ、前もって準備してたの?」

 ことねは黙って頷く。
 どこか、微かに頬が赤い。

「みなさま、朝から貧相ですこと♡」

 イザベラが差し出してきたのは、なんと金粉入りコンソメスープ。

 しかも器は、どこかで見たことのある高級ブランド食器。

「朝はまず、王家のスープで血を目覚めさせるのが常識ですわ!」

「いや、常識ではない……!」

 武尊は突っ込みつつも、黄金にきらめくスープを見て内心ざわついた。

 だが――その場の空気を“根こそぎ”持っていったのは、小春だった。

「は~いっ、皆さん、並んでくださ~い♪ 朝は笑顔とお味噌汁ですよ~♪」

 小春が持ってきたのは、湯気の立ち上る豚汁と、ふっくら炊きたてご飯。
 さらに、きのこご飯のおにぎり・だし巻き・自家製ぬか漬け・あら汁と……なんかもう、旅館の朝食。

「え、待って、旅館じゃんこれ!? 誰!?」

「えへへ~♡ 毎朝作ってますよ~。殿下が“普通の生活”を学ばれているのですから、普通のお味噌汁が一番です~♡」

 その言葉に、全員が一瞬黙った。

「……お前、料理スキル高すぎじゃない?」

 千夏が思わず唸る。

 ことねも視線をそらしながら、「……弁当、ちょっと見劣りするかも」と呟いた。

 イザベラに至っては、スプーンを持つ手が震えていた。

「く……この小柄な子、まさかここまで……」

 武尊の前に、四つの器と皿がズラリと並ぶ。

 ・千夏の目玉焼き(半熟+固焼き)
 ・ことねの和風弁当
 ・イザベラの金粉スープ
 ・小春の朝定食+α

 そして……

 如月がそっとメモを差し出してきた。

【今夜はカレーを作ります】

「……増えてるッッ!!!」

 睦月が無言で朝の配膳を監視している中、武尊の手が止まる。

「俺の胃袋が……愛で圧迫されてる……」

 朝から満漢全席。
 胃の容量よりも、愛情の質量が限界を迎えていた。

 だがそのとき、小春がぽつりとつぶやく。

「……でも、こうやって一緒にごはん作れるって、なんだか幸せですね~」

 その一言に、一瞬全員が黙る。

 千夏も、「……まあ、悪くはねぇな」と呟きながら目玉焼きの縁を箸でつついた。

 ことねは無言でおにぎりを差し出し、イザベラはスープをすっと武尊の方へ向けた。

 キッチンに、静かで温かな空気が流れる。

「いただきます」

 武尊が手を合わせると、ヒロインたちもそろって声を揃えた。

「「「「「いただきます!」」」」」

 その朝、
 アパートのキッチンには、ラブと味噌汁の香りが立ち上っていた。

(――続く)

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