『親王だけど、バレずに萌え活したいだけなのに女子に囲まれてる件』 〜茨城県つくば市で始まる、親王殿下の秋葉原文化潜入ライフ〜

本能寺から始める常陸之介寛浩

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【第72話】 『“あなたの隣”にいたい──私だけの居場所』

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 朝。

 玄関のドアを開けた瞬間、俺は言葉を失った。

 

「……おはよう、ございます」

 

 そこにいたのは――玖条瑠衣。

 制服姿、両手を揃えて前に組み、まるで“迎えのメイド”のような表情。

 

「え、えっと……玖条さん? なぜここに……」

 

「……待ってた。あなたと、一緒に登校したくて」

 

 声は静か。表情も穏やか。

 だが――その瞳の奥に、冷たい光が宿っていた。

 俺は直感で分かった。

 この子、今日ちょっとヤバいぞ。

 

 

 * * *

 

 教室。

 俺が席に着こうとすると――

「ちょっとだけ、待って」

 瑠衣が机の下に潜り込み、俺のローファーを左右きっちり整えてから、小さく頷いた。

「……はい。大丈夫。ちゃんと並んでる」

 まるで、そこが“彼女の居場所”であるかのように。

 

(……ど、どういう心理状態なんだこれ)

 思わず震える手でノートを広げると――

「……今日の授業、まとめておきました」

 彼女が差し出したのは、俺用に整理された色分け済みの授業ノートだった。

 

「……玖条さん。これ、いつ……?」

 

「昨夜。ずっと、考えてたの。あなたのために、何ができるか」

 

 その“ために”という言葉に、胸がざわついた。

 どこかで聞いたことがあるような――いや、違う。

 瑠衣は今、本気で“俺にだけ寄り添おう”としている。

 それは一見、健気で優しい行動に見えるが――

 その裏にあるのは、境界の消失だった。

 

 

 * * *

 

 昼休み。

 机を囲んで、ヒロインたちが集結。

 千夏がパンの袋を机に叩きつける。

 

「おい、見たか? 今朝の“お出迎え”」

 

「……うん、見た」ことねが頷いた。

「武尊くんの靴、あの子が並べてた」

「まるで“持ち主”みてーな顔でだぞ……」

 

「まるで?」ことねが静かに呟く。

 

「……でも、なんかわかる気もする。私も、ああなりそうだった」

 

「……ことね?」

 

「誰かに、気づいてもらえなかったら……」
「もし、武尊くんが、私のことずっと見てくれなかったら……」

 

 千夏は固まったまま、ことねの顔を見ていた。

 イザベラも静かに、だが確実に口角を引き締めた。

 

「……放っておけませんわね」

 

 

 * * *

 

 放課後。

 廊下を歩いていると、誰かの気配を感じた。

 振り返ると――そこにいたのは、またしても瑠衣。

 

「……帰るの、どっち?」

 

「え?」

 

「あなた、右に帰る時と左に帰る時がある。今日は、右」

 

 瑠衣は俺のカバンのストラップにそっと触れた。

「……今日は、あなたと同じ方向に帰る日だから」

 

(……監視されてた……?)

 背筋に冷たい汗が流れた。

 これはもう、ただの好意じゃない。

 明確な**“依存”**の始まりだ。

 

 

 * * *

 

 夜。

 アパートの屋上。

 風が静かに吹くなか、護衛くノ一たちが集まっていた。

 

 睦月が、資料を広げながら静かに口を開く。

 

「玖条瑠衣――中学時代にいじめを受けていた記録がある」

 

 如月が、屋根の端に腰を掛けたまま頷く。

 

「反応パターン分析の結果、武尊殿下に対して“心理的投影”が始まっている可能性」

 

「つまり……?」

 小春が首を傾げた。

 

「殿下を“救ってくれる存在”と認識してるのです。唯一の、寄る辺として」

 

「わたし……瑠衣ちゃん、嫌いじゃないのに……」

 小春がぽつりと呟く。

 

「なのに……このままじゃ……」

 

 睦月が冷静に結論を告げた。

「心理的依存度、極高。――殿下に接触する他ヒロインへの嫉妬行動の兆候あり」

 

「つまり……地雷化、確定ってことか」

 如月が、星空を見上げながら、ぽつりと呟いた。

 

 

 * * *

 

 そして次の日。

 俺が登校すると、教室のドアの前に――瑠衣がいた。

 目を伏せたまま、手にはなぜか――

 “他ヒロインの写真が貼られたリスト”。

 

「……ねぇ、どうしてこんなに、あなたの周りには女の子が多いの?」

 

 その声は、いつもの無表情ではなかった。

 どこか、震えていた。

 

 俺は、言葉を失った。

 

 ……どうすればいい?

 このまま何も言わずに、距離を保つ?

 それとも――

 

 心の奥に、小さな痛みが走った。

 この子は、たしかに“俺に救いを求めていた”。

 その想いに、俺は――どう応えるべきなのか。

 

(続く)
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