『親王だけど、バレずに萌え活したいだけなのに女子に囲まれてる件』 〜茨城県つくば市で始まる、親王殿下の秋葉原文化潜入ライフ〜

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第179話『同じクラスなのに、遠くなる距離』

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 新学期初日、2年B組。

 新たな座席表が配られ、生徒たちがワイワイと荷物を運びながら自分の席を確認していた。

「え~っと、俺の席は……っと」

 武尊は名簿と見比べながら、窓側中段の席へと移動する。春の柔らかな日差しが注ぐ、穏やかなポジションだ。

(お、ここなら授業中に外の空でも見て妄想できるな)

 ──と、油断していたその時。

「ふふ……偶然ね、隣の席になったようですわね」

 優雅な声とともに、武尊の隣に現れたのはイザベラだった。

 白銀の髪に、春の制服が映える。まるで絵画から抜け出たかのような気品に、教室の空気が一瞬止まる。

「ま、まじか……イザベラと隣!?」

「うおお、王女様席来たァァァ!!」

 周囲の男子が小さく歓声をあげる中、武尊は顔をひきつらせながら会釈した。

「い、イザベラ……よろしく」

「ふふ。私はいつでも“歓迎”ですわよ、殿下♡」

 その言い方に、小さな殺気が走った。

「ことね……おはよう」

「……うん、おはよう、武尊」

 ことねが一言だけ呟き、自分の席へと歩いていく。

 彼女の席は、武尊から斜め前。距離はあるようで、少し角度を変えれば視線が交差する位置。

(絶妙に……近い。しかも、机に積まれてるのが……)

「……それ、“推しのラノベ”、新刊?」

「別に。読むだけ」

 微妙な温度の会話。けれど、その“そっけなさ”が、逆に武尊の心をざわつかせた。

 ──そして、始業式後の放課後。

 別の教室。2年C組の一角で、千夏が机に頬杖をつきながらぼんやりと窓の外を見ていた。

「……はぁ」

 イレーネがその隣で、同じく重たい溜め息を吐いた。

「はぁぁぁ……」

「……お前、何のため息?」

「殿下の隣の席がイザベラさんだったからです……」

「私もだよ。ていうか、ことねも斜め前とか……近すぎでしょあれ!」

 千夏が思わず机を軽く叩く。

「去年はさ、なんだかんだで毎日顔合わせて、バカやって……一緒にいられたのに。なんで、よりによって別クラスなんだよ……」

 イレーネも唇を噛みしめた。

「戦いは、距離ではなく、熱量で決まると信じています……でも……でもやっぱり、近くにいられないの、寂しいです……」

 ──その頃、武尊は教室で荷物を整理しながら、窓の外に目をやっていた。

(千夏……イレーネ……今日は一度も顔、見てないな)

 ほんの少しの“物理的な距離”が、心に生むのは予想以上に大きな“空白”だった。

 ことねがちらりと武尊を見て、すぐに視線を逸らす。

「……イザベラさんって、距離感近いよね」

「えっ?」

「別に、何でもない。……ちょっと用事あるから先に帰るね」

「あ、ああ……」

 軽く手を振って去っていくことねの背中を見送りながら、武尊はひとり、ため息をつく。

(みんな、俺の近くにいるけど……どこか、遠くなった気がする)

 ──同じクラスになったからこその“近さ”と、別クラスになったからこその“遠さ”。

 物理的な距離では測れない、複雑な心の揺れが、少しずつ、全員の胸に波紋を広げていく。

 だがこの静かな波紋は、やがて“大きな決断”と“新たな再会”への伏線へと変わっていくのだった──

(続く)

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