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第220話『生徒会より通達──“文化部統廃合計画”始動!』
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春の陽気に包まれた昼下がり。
萌え文化研究部の部室は、今日もゆるく賑わっていた。
小春が淹れた甘いミルクティーの香りと、光川が読み上げる最新VTuberランキングに、部員たちは和やかに相槌を打つ。
「──で、フェンリル・ルルーナ様の新衣装、マジで“腹筋露出”だったわけですよ」
「推しの進化は尊いな……」
武尊がうっとりと呟く。
「それな。俺たち、歴史の証人だよな」
「ルナちゃん的にはもっと露出しててもいいと思うけど?」
「同意。推しの腹筋には感謝状を送りたい」
「……殿下、今とても満面の笑みですぅ~♡」
──と、和やかな雰囲気が一変したのは、その数分後だった。
「失礼するわよ」
部室のドアが勢いよく開かれ、ひとりの女生徒が入ってくる。
厳しい眼差しに、腕には生徒会腕章。
生徒会副会長・篠宮紗夜(しのみや・さよ)。
眼鏡の奥の瞳は冷たく、彼女は無表情のまま一枚の紙を机の上に置いた。
「これ、各部に配布されている通達よ。“文化部統廃合計画”の件で」
「ぶ、文化部……統廃合……!?」
光川が思わず声を裏返す。
武尊は素早く紙を読み、眉をひそめた。
つくば学園高等学校 生徒会通達
文化部活動の活性化および予算効率化を目的とし、
参加率・活動成果が低いとされる部活は廃部または統合の対象とする。
対象候補部:文学研究部/手芸同好会/風景写真部/萌え文化研究部……
「ちょっと待て……これ、ウチも対象に入ってるじゃん……!」
「現段階では“候補”よ。でも、今年度中に“活動成果の発表”が義務づけられる。
審査は生徒会・教師会・文化庁モデル事業協力官が行うわ」
紗夜は淡々とした口調で告げる。
「文化庁の協力官!? またあの眼鏡のやつか!?」
光川が顔を青くするが、紗夜は首を横に振る。
「前回の彼とは違う。“文芸指導専門官”が新しく着任したそうよ。詳細はまた後日」
武尊は目を伏せたまま、机に置かれた紙をじっと見つめていた。
「……このままだと、ウチの部活、なくなるかもしれないってことか」
「そういうこと」
「ふざけんな……!」
珍しくルナが声を荒げた。
「私たち、ちゃんと活動してるし! 同人誌だって作ったし! イベントも! 文化祭だって!!」
「“成果”ってのはね、“数字”でしか評価されないの。……残念だけど、それが“今の制度”よ」
紗夜は一言だけ残して、踵を返す。
ドアが閉まった瞬間──部室の空気が沈んだ。
「……光川」
武尊が口を開く。
「うちの活動記録、全部あるよな? 同人誌データ、部誌、活動報告書、写真、SNS投稿の記録──」
「もちろん! つーか全部“布教用”にバックアップ取ってあるし! 即出せるぞ!」
「よし、それをまとめて“プレゼン”資料にする」
「プレゼン……?」
「言ってただろ、紗夜さん。“活動成果の発表”って」
武尊は立ち上がる。
まるで王のように──だが、今ここにいるのは、あくまで“ひとりのオタク”だった。
「出よう、“成果プレゼン大会”に。萌え文化研究部は──“本気”でやってきたんだって証明しよう」
「おお……殿下が“本気モード”に……!」
小春がキラキラした目で見つめ、睦月がすでにプロジェクターの準備を始めていた。
「光川、資料班。ことね、スピーチ班。イレーネ、ヴィジュアルデザイン。ルナと千夏はコンテンツ演出。イザベラは外交・交渉班!」
「待って、わたくしそんなに外交上手くないですけど……!」
「“殿下の側近”としての貫禄なら、君が一番だよ」
「うっ……あ、ありがとうございますわ……!」
光川が机をばんっと叩く。
「よっしゃあああああ! やってやろうじゃんかよぉ!
この萌え文化研究部を潰すってんなら──」
「日本の萌えが、死ぬってことなんだよォォォォ!!!」
彼の叫びは、なぜか窓の外を飛び越え、校庭の向こうまで届いていた。
◇ ◇ ◇
《部内メモ:萌え文化研究部・作戦計画》
目標:部活存続のため、“活動成果プレゼン大会”へ出場
審査日:2週間後/場所:講堂
評価項目:活動履歴/文化的価値/社会的影響力/協調性
→武尊:「証明しよう。“萌え”も、“創作”も、“仲間”も──全部、守る価値があるってことを」
萌え文化研究部の部室は、今日もゆるく賑わっていた。
小春が淹れた甘いミルクティーの香りと、光川が読み上げる最新VTuberランキングに、部員たちは和やかに相槌を打つ。
「──で、フェンリル・ルルーナ様の新衣装、マジで“腹筋露出”だったわけですよ」
「推しの進化は尊いな……」
武尊がうっとりと呟く。
「それな。俺たち、歴史の証人だよな」
「ルナちゃん的にはもっと露出しててもいいと思うけど?」
「同意。推しの腹筋には感謝状を送りたい」
「……殿下、今とても満面の笑みですぅ~♡」
──と、和やかな雰囲気が一変したのは、その数分後だった。
「失礼するわよ」
部室のドアが勢いよく開かれ、ひとりの女生徒が入ってくる。
厳しい眼差しに、腕には生徒会腕章。
生徒会副会長・篠宮紗夜(しのみや・さよ)。
眼鏡の奥の瞳は冷たく、彼女は無表情のまま一枚の紙を机の上に置いた。
「これ、各部に配布されている通達よ。“文化部統廃合計画”の件で」
「ぶ、文化部……統廃合……!?」
光川が思わず声を裏返す。
武尊は素早く紙を読み、眉をひそめた。
つくば学園高等学校 生徒会通達
文化部活動の活性化および予算効率化を目的とし、
参加率・活動成果が低いとされる部活は廃部または統合の対象とする。
対象候補部:文学研究部/手芸同好会/風景写真部/萌え文化研究部……
「ちょっと待て……これ、ウチも対象に入ってるじゃん……!」
「現段階では“候補”よ。でも、今年度中に“活動成果の発表”が義務づけられる。
審査は生徒会・教師会・文化庁モデル事業協力官が行うわ」
紗夜は淡々とした口調で告げる。
「文化庁の協力官!? またあの眼鏡のやつか!?」
光川が顔を青くするが、紗夜は首を横に振る。
「前回の彼とは違う。“文芸指導専門官”が新しく着任したそうよ。詳細はまた後日」
武尊は目を伏せたまま、机に置かれた紙をじっと見つめていた。
「……このままだと、ウチの部活、なくなるかもしれないってことか」
「そういうこと」
「ふざけんな……!」
珍しくルナが声を荒げた。
「私たち、ちゃんと活動してるし! 同人誌だって作ったし! イベントも! 文化祭だって!!」
「“成果”ってのはね、“数字”でしか評価されないの。……残念だけど、それが“今の制度”よ」
紗夜は一言だけ残して、踵を返す。
ドアが閉まった瞬間──部室の空気が沈んだ。
「……光川」
武尊が口を開く。
「うちの活動記録、全部あるよな? 同人誌データ、部誌、活動報告書、写真、SNS投稿の記録──」
「もちろん! つーか全部“布教用”にバックアップ取ってあるし! 即出せるぞ!」
「よし、それをまとめて“プレゼン”資料にする」
「プレゼン……?」
「言ってただろ、紗夜さん。“活動成果の発表”って」
武尊は立ち上がる。
まるで王のように──だが、今ここにいるのは、あくまで“ひとりのオタク”だった。
「出よう、“成果プレゼン大会”に。萌え文化研究部は──“本気”でやってきたんだって証明しよう」
「おお……殿下が“本気モード”に……!」
小春がキラキラした目で見つめ、睦月がすでにプロジェクターの準備を始めていた。
「光川、資料班。ことね、スピーチ班。イレーネ、ヴィジュアルデザイン。ルナと千夏はコンテンツ演出。イザベラは外交・交渉班!」
「待って、わたくしそんなに外交上手くないですけど……!」
「“殿下の側近”としての貫禄なら、君が一番だよ」
「うっ……あ、ありがとうございますわ……!」
光川が机をばんっと叩く。
「よっしゃあああああ! やってやろうじゃんかよぉ!
この萌え文化研究部を潰すってんなら──」
「日本の萌えが、死ぬってことなんだよォォォォ!!!」
彼の叫びは、なぜか窓の外を飛び越え、校庭の向こうまで届いていた。
◇ ◇ ◇
《部内メモ:萌え文化研究部・作戦計画》
目標:部活存続のため、“活動成果プレゼン大会”へ出場
審査日:2週間後/場所:講堂
評価項目:活動履歴/文化的価値/社会的影響力/協調性
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