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《選ばれざる乳たち──誠実の次元を超えて》編
第90話『そして、乳は揺れ続ける──誰かのためでも、自分のためでもなく』
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王都に張り詰めた緊張は、ようやく静寂とともに溶け始めていた。
禁乳結社《セラフィカ》は、正式に解散を宣言。リーダーだったメルティアは、王都の公的な審問を経て、乳信仰の象徴だった“揺れるもの”たちへの赦しと対話の意思を表明した。
「この胸がなくとも、想いは届くと──そう証明してくれた者たちに、感謝します」
硬く結ばれた口元が緩み、微笑みに変わる。その変化の兆しこそ、真の意味での勝利だった。
騎士団は武器を納め、温泉郷《湯乳(ゆにゅう)郷》から戻った乙女たちは、それぞれの胸を誇らしげに掲げながら、日常の生活へと帰っていった。
「結社の拠点だったこの場所は──今後、“誰もが自分の胸に向き合える”場として、開放されます」
乳の象徴だった大理石の彫像は撤去され、代わりに設置されたのは、小さな噴水。
その中心に立つ彫像は、乳でも剣でもなく、両手を広げた人間の姿だった。
「揺れることが、罪ではないと知った。この胸に宿るのは、ただの感情。定義できない、けれど確かにここにある……」
マリアは医療院に戻り、ソフィアは新たな巫女として、自らの信仰と向き合う日々へ。
クラリスは騎士団の訓練場にて、新たな後輩たちへ“誠実乳演説”の火を伝えている。
エミリアは……変わらず書庫にこもり、乳哲学を記す筆を止めない。
「……私はまだ、あの人の隣には並べない。でも、それでも構わないの。私の胸は、今日も揺れてる」
王都に落ちた夜の帳。
静寂の中、誰もいない丘の上に、ふたつの影があった。
リリアーヌと、拓真。
互いに言葉はない。
だが、ふたりの視線が交わるだけで、その胸の奥に湧き上がる感情が、名を超えて伝わってくる。
風がそよぐ。
それに合わせて、リリアーヌの金糸のような髪がふわりと揺れ、拓真の前髪が小さく跳ねた。
彼女が、ふと口を開こうとする。
が、やめた。
ただ一歩、足を踏み出す。
拓真も、それに応じて、そっと片手を差し出す。
指先と指先が、空気の中で触れそうで、触れない距離を漂う。
それで、よかった。
言葉は、要らなかった。
この瞬間、胸が確かに“揺れている”──その事実だけが、すべてだった。
──ナレーション──
「恋でもなく、友情でもない。でも確かに胸は揺れていた──それだけで、十分だ」
こうして、“誠実乳”を巡る大騒動は、一応の終幕を迎えた。
だが物語は、まだ終わらない。
胸が揺れる限り、人の想いもまた、揺れ続けるのだから──。
禁乳結社《セラフィカ》は、正式に解散を宣言。リーダーだったメルティアは、王都の公的な審問を経て、乳信仰の象徴だった“揺れるもの”たちへの赦しと対話の意思を表明した。
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硬く結ばれた口元が緩み、微笑みに変わる。その変化の兆しこそ、真の意味での勝利だった。
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「結社の拠点だったこの場所は──今後、“誰もが自分の胸に向き合える”場として、開放されます」
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「……私はまだ、あの人の隣には並べない。でも、それでも構わないの。私の胸は、今日も揺れてる」
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リリアーヌと、拓真。
互いに言葉はない。
だが、ふたりの視線が交わるだけで、その胸の奥に湧き上がる感情が、名を超えて伝わってくる。
風がそよぐ。
それに合わせて、リリアーヌの金糸のような髪がふわりと揺れ、拓真の前髪が小さく跳ねた。
彼女が、ふと口を開こうとする。
が、やめた。
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だが物語は、まだ終わらない。
胸が揺れる限り、人の想いもまた、揺れ続けるのだから──。
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