『遺伝子治療革命〈エピゲノム・プロトコル〉──倫理と進化の臨界点』

本能寺から始める常陸之介寛浩

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章間特別回 ドキュメントE.C.S.T.──“神の手”は誰のものか

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 提供:日本公営放送協会(JPK)/放送日:202X年12月10日 21:00~22:30

 ナレーション:加賀見涼子(NHK系キャスター・JPK特別報道局)

 画面は静かにフェードインし、モノクロの手術室。
 酸素マスクをした少女の小さな胸が、わずかに上下していた。

 ナレーターの落ち着いた声が重なる。

「この日、ひとつの命が、世界の常識を越えた」

 画面が切り替わり、東京・帝都大学附属病院。
 “世界初のヒトエピゲノム補正治療”という字幕が現れる。

 ──彼の名は、天城朔弥。

 遺伝子医療研究者であり、同時に、ある少女の父親でもあった。

【インタビュー:那珂湊比呂志 教授(帝都大学医学部)】

「彼は研究者として、医学の臨界点にいた。しかし、それ以上に“父親”だったんです」

 映像は、結彩の治療に用いられたE.C.S.T.治療プロトコルをCGで再現する。

 CRISPR-Cas9の導入、ナノキャリアによる投与経路、そしてRNAによるクロマチン再構築。

「彼がしたのは、“神の模倣”ではない。命を守るための“科学の介入”だった」

【VTR:街頭インタビュー】

「もし自分の子が同じ病気だったら……やると思います」
「倫理? 難しいけど、生きてほしい気持ちの方が強い」
「けどやっぱり、怖い。“人間でなくなる”かもしれないって言われたら……」

【スタジオ:専門家座談会・国際社会の対応】

 ・WHO:『E.C.S.T.の技術的完成度は高い。だが、社会的議論を置き去りにしてはならない』
 ・厚労省医薬局:『国内法上、未承認であることは変わらない』
 ・UNESCO生命倫理委員会:『人間の定義を再考する時が来た』

 映像には、各国の議場や国連本部での会議が映し出される。

【記者特集:結彩と天城】

 番組後半、カメラは静かに、退院間際の結彩の姿を追う。

 夕焼けの病院庭園。手を繋いで歩く父娘。

 結彩は問いかける。

「ねえ、パパ。わたし……生きてて、いいのかな?」

 ナレーター:
「その問いは、彼女一人のものではない。全人類が、これから向き合う“選択”なのだ」

 番組の最後、黒背景に白い文字が浮かぶ。

 科学が問うのは、命の“可能性”。
 社会が問うのは、命の“境界線”。

 あなたは、どこに“線”を引きますか?

 <番組終了>
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