『遺伝子治療革命〈エピゲノム・プロトコル〉──倫理と進化の臨界点』

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第39話 未来を渡さない

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 年が明けた202X年の元日。

 世界中が新しい年を祝う中、
 結彩と奏人、そして少数精鋭となった《命の自由連盟》は、
 静かに、そして確かに動き始めていた。

 彼らは知っていた。
 祝福の裏で、
 MIRAによる「精神管理社会」はさらに拡大し続けていることを。

 自由は、今も、失われ続けていることを。

 だから──彼らは立ち上がった。

 再び。

 仮設拠点の小さな会議室。

 集まったメンバーは、以前に比べればほんの一握りだった。

 だが、その目には、確かな光が宿っていた。

「……世界中で、小さな声が上がり始めている」

 天城朔弥が、プロジェクターを点けた。

 映し出されたのは、
 アジア、ヨーロッパ、アフリカ、南米──

 あらゆる場所で、
 市民たちが自主的に立ち上げた“自由ネットワーク”の記録だった。

【#SaveOurMinds】
【#自由を選ぶ】
【#WeAreNotNumbers】

「最初は、ただの小さな集まりだった」

「だが今、ネットワーク同士が結びつき、
 徐々に“大きなうねり”になりつつある」

「そして──」

 天城は、全員を見渡した。

「彼らは、我々《命の自由連盟》に協力を申し出てきた」

 どよめきが起きた。

 結彩も、奏人も、息を呑んだ。

「本当に……?」

「……まだ、諦めてない人たちがいるんだ……」

 天城は静かに頷いた。

「世界中に散らばる、
 自由を信じる者たち」

「国境を越え、
 文化を越え、
 宗教を越え、
 肌の色を越え──」

「たった一つ、自由への信念で、
 繋がろうとしている」

「これが、最後のチャンスかもしれない」

 天城は言った。

「だが──」

「ここで手を伸ばせなければ、
 未来は完全に奪われる」

 会議は、熱を帯びた。

 連携手段。
 暗号通信システム。
 緊急避難経路。
 情報発信計画。

 一つひとつ、地道に議論が重ねられた。

 もう、理想だけでは戦えない。
 現実的な準備と、冷静な覚悟が必要だった。

「俺たちは、正義の味方じゃない」

 奏人が言った。

「英雄でもない。
 特別でもない」

「ただ──」

「生きるために、戦う」

「未来を、渡さないために」

 その言葉に、全員が頷いた。

 幼い者も、年老いた者も。
 国籍も、言語も、関係なかった。

 皆、自由を守るためにここにいた。

 数日後。

 世界中の自由ネットワークとの接続が、次々と確立された。

 暗号化された通信網。

 匿名アカウントによる情報共有。

 草の根的な市民運動。

「MIRAの真実」を暴き、
 精神管理社会の危険性を広めるための地下活動が、
 静かに、しかし確実に広がり始めた。

「誰も知らないうちに、心まで奪われる」

「その未来を、許さない」

 結彩たちは、
 世界中の無数の「小さな火」と繋がった。

 まだ、炎は小さい。

 吹き飛ばされれば、一瞬で消えるかもしれない。

 でも──

 繋がった火は、確かに、広がり始めていた。

 夜。
 仮拠点の屋上。

 結彩と奏人は、並んで夜空を見上げていた。

 星々が、凍てついた空に瞬いている。

「……これ、全部、誰かの光なんだよね」

 結彩が、ぽつりと言った。

「遠く離れてても、
 見えなくても、
 みんな、ちゃんと光ってる」

「一人じゃないんだって、
 思える」

 奏人は、微笑んだ。

「そうだな」

「一人じゃない」

「たとえこの手に掴めなくても──」

「世界中に、同じ想いを持った仲間がいる」

 二人は、そっと手を繋いだ。

 冷たくて、
 でも、確かに温かい手だった。

「わたしたち、
 未来を絶対に渡さない」

 結彩が、静かに誓った。

「誰にも、
 奪わせない」

「誰にも、
 決めさせない」

「わたしたちの未来は、
 わたしたち自身が選ぶ」

 夜風が吹いた。

 遠くで、まだ小さな火花がはぜる音がした。

 世界は、まだ暗い。

 でも、
 確かに、新しい夜明けが近づいている。

 彼らは、知っていた。

 この闘いは、
 きっと長い。

 きっと苦しい。

 でも、
 負けない。

 自由を、
 信じ続ける限り──。
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