前代未聞のトイレ異世界転移ファンタジー～うちのトイレは異次元でした。街中は勘弁してください。いや、そこもちょっと！～

第158話：忍者屋敷で命がけのミッション！

俺の名前は佐藤太一、１８歳。
コンビニ飯が大好きで、それが原因で腹を壊しがちな、ごく普通の高校生だ……と言えたらどんなに楽か。
でも俺の日常は、引っ越し先のアパートに備え付けられた曰く付きトイレのせいで、完全にカオスと化してる。 

トイレのドアを開けた瞬間、どこか知らない場所に便器ごと転移して、用を足さないと戻れない仕様。
もう何回目か分からないけど、毎回メンタルが削られる。
このトイレ、俺の状況とか感情とか完全に無視して転移先決めるっぽいし、引っ越した当初は「駅近で家賃安い、ラッキー！」なんて浮かれてた自分が恨めしい。 

今日も朝から腹がゴロゴロ鳴ってる。
原因は昨夜のコンビニ飯だ。
半額だった「激辛キムチチゲラーメン」を勢いで食っちまって、胃が今朝から暴動起こしてる。
キムチの酸っぱさと唐辛子の辛さが胃の中でケンカしてる感じ。
朝ごはん抜きで我慢してたけど、学校から帰った昼過ぎに限界が来た。 

仕方なくトイレに駆け込んだら、ドアを開けた瞬間――
薄暗い和室が目の前に広がった。
黒装束の忍者が天井裏に潜んでたり、刀を持った武士が「敵襲か!?」って叫んでる。
俺の便器はそのど真ん中、畳の上にポツンと出現。 

「うわっ、忍者!? 戦国時代の屋敷かよ！」 

目の前では忍者が手裏剣を投げてて、武士が刀を振り回してる。
障子の向こうで「ドン！」「ガシャン！」って物が壊れる音が響いてるし、屋敷全体が戦場みたいだ。
天井から忍者がスルスル降りてきて、俺の便器のすぐ横を通り過ぎる。
見えてないはずなのに、風圧で髪が揺れるからビビるって！ 

「こんなとこで用を足すとか、マジで命がけだろ……！」 

腹痛は待ってくれない。
キムチチゲの辛さが胃を締め付けてきて、下腹部がギュルギュル鳴ってる。
でもさ、忍者と武士が目の前で斬り合ってる中、どうやって集中しろって言うんだよ！
手裏剣がビューンって飛んできて、俺の頭上スレスレを通過。
物理的干渉できないルールだから当たらないのは分かってるけど、心臓バクバクだよ！ 

「いやいや、落ち着け俺。『俺からは見えてるけど、向こうからは見えない』がルールだろ？」 

そう自分に言い聞かせて、深呼吸する。
でもその瞬間、武士が「そこに潜んでおるな！」って叫んで、俺の便器のすぐ横に刀をブンッと振り下ろしてきた。
畳がザクッと斬れて、俺は思わず「うわああ！」って叫ぶ。
見えてないはずなのに、気配でバレてるのか!? 

「やばい、やばい、やばい！ 早く終わらせないと精神持たねえ！」 

腹に全神経を集中させる。
おっ、おっ、おっ、なんとか出そう……よし、気合入れろ！
ブッ。 

「……うっ、音が忍者屋敷に響いた！」 

忍者の一人がピタッと動きを止めて、こっちを睨むような仕草。
武士も「何だ、この異臭は!?」って刀を構えたまま鼻をつまんでる。
見えてないはずなのに、音と匂いで完全に怪しまれてるじゃん！
俺の羞恥心が限界突破してる中、なんとか次のステップへ。
ポチャン。 

「よっしゃ、出た！ 終わった！」 

次の瞬間、頭の中にいつもの声が響く。
「ミッションクリアー、通常トイレに戻ります」 

光に包まれてアパートの狭いトイレに戻った瞬間、便器の冷たい感触と換気扇の微かな音にホッとする。
心臓バクバクで息を整えながら、俺は畳に突っ伏す――いや、便器に座ったままだけど、気持ち的には突っ伏してる。 

「本当に何でこんなトイレ付きの部屋に住んじまったんだろ……」 

汗だくで震えながら呟く。
忍者と武士に囲まれて用を足すとか、俺の人生ハードモードすぎるだろ。
昨日は恐竜時代でティラノにビビったし、一昨日は未来の空中都市でカップルのデートぶち壊したし、毎回毎回が命がけの冒険だ。
でもさ、このトイレの謎が分からないままじゃ、俺の腹痛ライフは終わりそうにない。 

「ったく、次のトイレはどこに飛ばされるんだよ……」 

腹痛が収まったことに感謝しつつ、俺はトイレのドアをそっと閉めた。
次に開けるのが怖い。
でもキムチチゲの残りがまだ胃で暴れてる気がするし、またすぐ来るかもしれない。
コンビニ飯、やめたいけどやめられないんだよな。
安いし美味いし、半額シール見るとつい手が伸びる。 

とりあえず、今日はもうトイレ行きたくない。
でも腹の調子がそんな願い聞いてくれるわけないか。
俺の戦いはまだまだ続くんだ。
忍者屋敷で生き延びただけでも褒めてくれよ、自分。