前代未聞のトイレ異世界転移ファンタジー~うちのトイレは異次元でした。街中は勘弁してください。いや、そこもちょっと!~

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第173話:ペスト大流行の町中で絶望ミッション!? もう耐えきれねえよ!

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 俺の名前は佐藤太一、18歳。
 コンビニ飯が大好きで、それが原因で腹を壊しがちな、ごく普通の高校生だ……と言えたらどんなに楽か。
 最近はコンビニ弁当だけじゃなく、友達の手料理でも胃をやられてる俺の運命が恨めしい。
 俺の日常は、引っ越し先のアパートに備え付けられた曰く付きトイレのせいで、完全にカオスと化してる。  
 トイレのドアを開けた瞬間、どこか知らない場所に便器ごと転移して、用を足さないと戻れない仕様。
 もう何回目か分からないけど、毎回メンタルが削られる。
 このトイレ、俺の状況とか感情とか完全に無視して転移先決めるっぽいし、引っ越した当初は「駅近で家賃安い、ラッキー!」なんて浮かれてた自分が恨めしい。  
 昨日は江戸時代の花街で賑わいのど真ん中で目立ちすぎる地獄を味わった。
 その前は氷河期の洞窟でサーベルタイガーにビビったし、毎回毎回が試練だ。
 なのに、今日もまた腹がゴロゴロ鳴ってる。
 原因は昨夜の飯だ。
 半額の「激辛スープカレー」を食っただけじゃなく、彩花が「太一くんに温まってほしいな!」って持ってきた手作り激辛トマトシチューも一緒に飲んじまった。
 コンビニの辛さと彩花の優しさ(と辛さ)が胃の中で暴れてる感じだ。  
 学校から帰って少し音楽聞いてたけど、我慢の限界が来た。
 仕方なくトイレに駆け込んだら、ドアを開けた瞬間――
 腐臭と嘔吐の音が鼻と耳を襲ってきた。
 目の前には中世ヨーロッパのペスト大流行中の町中。
 俺の便器は、石畳の通りすがりのど真ん中にポツンと出現。  
「うおっ、ペスト!? 中世の町かよ!」  
 周りにはボロ布をまとった人々が咳き込んでて、道端には病人や死体が転がってる。
「助けてくれ!」って叫ぶ声と、「神のご加護を!」って祈る声が響き合ってる。
 空はどんより曇ってて、ネズミが石畳をチョロチョロ走り回ってる。
 腐った食べ物と病気の匂いが漂ってきて、俺の便器が不衛生な町の中心にドーンと鎮座してるよ!  
「こんなとこで用を足すとか、マジで無理ゲーだろ……!」  
 腹痛は待ってくれない。
 スープカレーの辛さと彩花のトマトシチューのスパイスが下腹部をギュルギュル締め付けてきて、冷や汗が止まらない。
 でもさ、ペスト大流行の町中で、どうやって集中しろって言うんだよ!
 近くで「ゲホッ、ゲホッ!」って咳き込むおっさんが俺の便器の横で倒れ込むし、医者っぽいマスク男が「消毒せよ!」って叫んでる。
 腐臭が鼻を突き抜けて、吐き気と羞恥心がヤバいよ!  
「いやいや、落ち着け俺。『俺からは見えてるけど、向こうからは見えない』がルールだろ?」  
 そう自分に言い聞かせて、深呼吸する――って、深呼吸したら腐臭が肺に入ってきて余計に気持ち悪い!
 その瞬間、近くで「ドサッ!」って音がして、荷車に死体が積まれる。
「ペストだ! 逃げろ!」って叫ぶ声が聞こえてきて、町がパニック状態。
 俺の心臓がバクバク加速して、腹もゴロゴロが止まらないよ!  
「やばい、やばい、やばい! 早く終わらせないと精神持たねえ!」  
 腹に全神経を集中させる。
 おっ、おっ、おっ、なんとか出そう……よし、気合入れろ!
 ブッ。  
「……うっ、音が町中に響いた!」  
 腐臭の中で一瞬静まり返って、マスク男が「何だ、この異臭!?」って振り向く。
 病人たちが「悪魔の仕業か!?」ってざわつき出し、おばさんが「神よ、救いを!」って泣き叫ぶ。
 見えてないはずなのに、匂いで完全にバレてるじゃん!
 俺の羞恥心と恐怖が限界突破してる中、なんとか次のステップへ。
 ポチャン。  
「よっしゃ、出た! 終わった!」  
 次の瞬間、頭の中にいつもの声が響く。
「ミッションクリアー、通常トイレに戻ります」  
 光に包まれてアパートのトイレに戻った瞬間、便器の冷たい感触と換気扇の微かな音にホッとする。
 心臓バクバクで息を整えながら、俺は便器に座ったまま放心状態。  
「本当に何でこんなトイレ付きの部屋に住んじまったんだろ……」  
 汗だくで呟く。
 ペスト大流行の町中で用を足すとか、俺の人生ハードすぎだろ。
 今回は遥や彩花たちが出てこなくて一人だったけど、腐臭と病人の叫び声だけで十分地獄だった。
 あの不衛生な空気の中で耐えた俺、よくやったよ……いや、やりたくなかったよ!  
「ったく、次のトイレはどこに飛ばされるんだよ……」  
 腹痛が収まったことに感謝しつつ、俺はトイレのドアをそっと閉めた。
 次に開けるのが怖い。
 でもスープカレーとトマトシチューの残りがまだ胃で暴れてる気がするし、またすぐ来るかもしれない。
 コンビニ飯も彩花の手料理も、やめたいけどやめられないんだよな。
 安いし美味いし、優しさも嬉しいし、つい食べちゃうんだよ。  
 とりあえず、今日はもうトイレ行きたくない。
 でも腹の調子がそんな願い聞いてくれるわけないか。
 ペストの町で生き延びただけでも褒めてくれよ、自分。
 あの腐臭とパニックの中でミッションクリアしたんだからさ。  

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