前代未聞のトイレ異世界転移ファンタジー~うちのトイレは異次元でした。街中は勘弁してください。いや、そこもちょっと!~

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第175話:登別温泉の熊牧場でクマと対峙!? もう逃げ場ねえよ!

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 俺の名前は佐藤太一、18歳。
 コンビニ飯が大好きで、それが原因で腹を壊しがちな、ごく普通の高校生だ……と言えたらどんなに楽か。
 最近はコンビニ弁当だけじゃなく、友達の手料理でも胃をやられてる俺の運命が恨めしい。
 俺の日常は、引っ越し先のアパートに備え付けられた曰く付きトイレのせいで、完全にカオスと化してる。  
 トイレのドアを開けた瞬間、どこか知らない場所に便器ごと転移して、用を足さないと戻れない仕様。
 もう何回目か分からないけど、毎回メンタルが削られる。
 このトイレ、俺の状況とか感情とか完全に無視して転移先決めるっぽいし、引っ越した当初は「駅近で家賃安い、ラッキー!」なんて浮かれてた自分が恨めしい。  
 昨日は異世界の娼婦館で妖艶な雰囲気の中、気まずさに耐える地獄を味わった。
 その前はペスト大流行の町中で腐臭にやられたし、毎回毎回が試練だ。
 なのに、今日もまた腹がゴロゴロ鳴ってる。
 原因は昨夜の飯だ。
 半額の「激辛キムチチャーシューメン」を食っただけじゃなく、彩花が「太一くんに温まってほしいな!」って持ってきた手作り激辛味噌汁も一緒に飲んじまった。
 コンビニの辛さと彩花の優しさ(と辛さ)が胃の中で暴れてる感じだ。  
 学校から帰って少し宿題してたけど、我慢の限界が来た。
 仕方なくトイレに駆け込んだら、ドアを開けた瞬間――
 硫黄の匂いと、クマの唸り声が鼻と耳を襲ってきた。
 目の前には登別温泉の熊牧場、木の柵に囲まれたエリア。
 俺の便器は、そのクマたちがウロウロする牧場のど真ん中にポツンと出現。  
「うおっ、熊牧場!? 登別温泉かよ!」  
 周りにはデカいヒグマが「グルル…」って唸りながら歩いてて、観光客が柵の外から「かわいいね~」って餌投げてる。
 硫黄の温泉臭が漂ってきて、遠くに湯煙が上がってるのが見える。
 木の柵と看板が牧場っぽい雰囲気出してるけど、俺の便器がクマの群れの中心にドーンと鎮座してて、場違いすぎるよ!  
「こんなとこで用を足すとか、マジで無理ゲーだろ……!」  
 腹痛は待ってくれない。
 キムチチャーシューメンの辛さと彩花の味噌汁のスパイスが下腹部をギュルギュル締め付けてきて、冷や汗が止まらない。
 でもさ、熊牧場のど真ん中で、どうやって集中しろって言うんだよ!
 近くのクマが「ガウッ!」って吠えて俺の便器に近づいてくるし、別のクマが地面嗅いで「クンクン…」ってこっち見てる。
 観光客が「何か変な動きしてるね?」って笑ってるけど、俺には笑いものじゃないよ!  
「いやいや、落ち着け俺。『俺からは見えてるけど、向こうからは見えない』がルールだろ?」  
 そう自分に言い聞かせて、深呼吸する。
 でもその瞬間、一番デカいクマが「グルオオオ!」って立ち上がって、俺の便器に前足ドーンって叩きつけてくる――って、物理的干渉できないから当たらないけど、錯覚で心臓止まりそうだよ!
 観光客が「おお、すごい!」って拍手してるけど、俺の恐怖と羞恥心がヤバい!  
「やばい、やばい、やばい! 早く終わらせないと精神持たねえ!」  
 腹に全神経を集中させる。
 おっ、おっ、おっ、なんとか出そう……よし、気合入れろ!
 ブッ。  
「……うっ、音が牧場に響いた!」  
 クマたちが一斉に「グルッ!?」って動き止めて、鼻をクンクン動かす。
 観光客が「何だ、この臭い!?」ってざわつき出し、子供が「クマがオナラしたの?」って笑う。
 デカいクマが俺の便器の周りをウロウロ嗅ぎ始めて、見えてないはずなのに匂いでバレてるじゃん!
 俺の羞恥心と恐怖が限界突破してる中、なんとか次のステップへ。
 ポチャン。  
「よっしゃ、出た! 終わった!」  
 次の瞬間、頭の中にいつもの声が響く。
「 misinformationクリアー、通常トイレに戻ります」  
 光に包まれてアパートのトイレに戻った瞬間、便器の冷たい感触と換気扇の微かな音にホッとする。
 心臓バクバクで息を整えながら、俺は便器に座ったまま放心状態。  
「本当に何でこんなトイレ付きの部屋に住んじまったんだろ……」  
 汗だくで呟く。
 登別温泉の熊牧場でクマに囲まれながら用を足すとか、俺の人生ハードすぎだろ。
 今回は遥や彩花たちが出てこなくて一人だったけど、クマの唸り声と観光客の視線だけで十分地獄だった。
 あの硫黄臭とクマの気配の中で耐えた俺、よくやったよ……いや、やりたくなかったよ!  
「ったく、次のトイレはどこに飛ばされるんだよ……」  
 腹痛が収まったことに感謝しつつ、俺はトイレのドアをそっと閉めた。
 次に開けるのが怖い。
 でもキムチチャーシューメンと味噌汁の残りがまだ胃で暴れてる気がするし、またすぐ来るかもしれない。
 コンビニ飯も彩花の手料理も、やめたいけどやめられないんだよな。
 安いし美味いし、優しさも嬉しいし、つい食べちゃうんだよ。  
 とりあえず、今日はもうトイレ行きたくない。
 でも腹の調子がそんな願い聞いてくれるわけないか。
 熊牧場で生き延びただけでも褒めてくれよ、自分。
 あのクマと観光客の中でミッションクリアしたんだからさ。  

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