天然痘から始まる伊達政宗転生の天下統一~ 独眼竜と呼ばれても中身はただの美少女好き戦国オタクです~

常陸之介寛浩📚️書籍・本能寺から始める

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『知将を奪え──梵天丸、謀の口を開く』

 父の背中は、米沢の冬と同じくらい冷たく、重かった。



 雪混じりの空気が、障子の隙間から忍び込み、火鉢の熱を奪う。

 それでも、この場はぬるくなどできない。今この時、伊達家の命運を分ける問いが──放たれたのだから。



 「……して、相馬を落とすための策はあるか?」



 父は、言いながら茶を啜った。だがその声は、茶のぬくもりとは裏腹に鋭かった。



 「流石に梵天丸には無理か……」



 その一言に、俺はかすかに眉を上げた。

 無理か──? ならば見せてやろう。転生者の“本気”というものを。



 「──策は、ございます」



 父の茶碗が、音もなく膝の上で止まった。



 「おお?」



 「鍵を握るのは、大内定綱にございます」



 「……定綱?」



 父が眉をひそめた。

 そう。まさにその反応が、俺の“読み通り”だ。



 「はい。大内定綱は、今こそ相馬家に従属しておりますが、心底忠義を誓っているわけではございません。むしろ、己の理と才覚を尊び、それを生かせる“器”を探しておられる御仁です」



 「定綱が……才覚を生かす器、か」



 父の眼が細まる。



 「彼は戦においても政においても並外れた眼を持ち、地の利を読み、心を読める稀有な将です。あの男を、伊達家の“真の家臣”として迎えることができれば──」



 俺は、一度言葉を切った。



 「──相馬は、戦わずして落とせます」



 「…………」



 火鉢の炭が、ぱち、と音を立てた。



 父の手が、顎に添えられた。迷いと懐疑が交錯しているのが分かる。



 「定綱か……確かに知将よ。だが、あやつは“腹が読めん”」



 父が、低く呟く。



 「才はある。だが、それ以上に“自らを主君と見る眼”を隠しておる。わしはそれが不気味でならぬ」



 「……畏れながら申し上げます。父上、それこそが“使いよう”でございます」



 「む?」



 「人には二種あると存じます。己の器を信じ、誰かの下に立つことを潔しとする者と──己が主でありたいと願いながら、才をもて余す者。後者を見誤れば裏切りを生みますが、きちんと“望む器”を見せれば、忠義は深くなります」



 「……それが、わしにできると思うか?」



 「いいえ。父上が定綱殿にとっての“器”となるのではなく──梵天丸が、それになるよう努めます」



 その一言に、父の眼が大きく見開かれた。



 沈黙が落ちる。ふたりの間を、雪の気配が渡っていく。



 やがて、父は深く息を吐いた。



 「……六つにして、謀るか。そなたは──やはり、不動明王の申し子よのう」



 「大仰にございます」



 俺は目を伏せたが、内心はバクバクだった。



 大内定綱。

 歴史上、幾度も主を変えながら、その都度勢力の中枢に食い込んだ智将。

 彼を早期に取り込めば、伊達家の東進は加速する。

 逆に見誤れば、裏目となる──諸刃の剣だ。



 だが、賭ける価値はある。



 父は、地図をもう一度見下ろしながら、低く言った。



 「……よかろう。まずは、定綱の動きを探らせる」



 「はっ」



 「会津より戻ったばかりで早いが、そなたにもその準備を任せるぞ」



 「はい」



 俺は深く頭を下げた。



 これが、俺の“初手”だ。

 伊達政宗としての、最初の政治的仕掛け。

 未来を変える駒は、今、盤に置かれた。



 ──さあ、歴史よ。

 俺の手で、伊達の旗を未来へ押し上げてみせる。
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