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第一章
放課後 1
しおりを挟む── キーンコーンカーンコーン...
授業終わりのチャイムが鳴り、一斉に生徒達は席を立ち上がる。
授業という退屈な時間を過ごした僕には他の生徒達と違いまだすることがある。
今すぐ帰りたい気持ちに襲われるが我慢しよう。
僕はそう意気込み、慶子に言われた通り掃除をしようと準備をする。
「優~私の代わりに全部やってよ~」
葵がため息を吐きながら僕に言う。
掃除を全部僕にやって欲しいようだ。
だがーー
「断る。葵が掃除をサボろうとしていたことを先生に言うぞ?」
当然断った。
先生に言うと言ったが僕はそんなことをする気はない。
なぜならこう言えば葵は
「わぁ~!やめて!やるからぁ」
しっかりとやるから。
ホント、ちゃっかりしてるなぁ。
心の中で僕は葵に呆れながら言う。
まずは、机を端に寄せないとな。
僕はそう思うと机を運ぶために動き始める。
葵も僕が動き始めたのを見て、机を運び始める。
そこから数分がたった。
僕と葵は黙々と机を運び、箒を持ちようやくのこと掃除を始めるところになっていた。
「早く終わらせて帰ろう」
「そうだね」
僕は再び意気込む。そして箒を構えるとーー
教室の窓ガラスが一斉に割れた。
なんだ!?と思い、割れた窓ガラスの方を向く。
するとそこには、体長1メートルを有に超える巨大なカラスがいた。
カラスからはどす黒い瘴気の様なものを発している。
そしてそのカラスは明白な殺意を僕等に向けている。
ここまでで分かったこと。
それは、このカラスが暴走体ーー禍憑きだということだ。
「キエエエエエエエェェ」
雄叫びに近い叫びをカラスはあげる。
禍憑きの姿が僕に過去を思い出させてくる。
心の奥底からとめどない殺意が溢れてくる。
──殺したい。殺したい。
どす黒い感情が僕の心の中を渦巻いている。
僕はその感情の赴くまま動くことは出来なかった。
なぜならどれだけ殺したいと思っていてもそれを成す力も、勇気も、覚悟もないから...。
自分の弱さに嫌気がさしてきた。
次第に怒りという感情がふつふつと湧いてきた。
少しでも心が落ち着くように、僕は深呼吸をする。
今は、そんなことを考えている暇はないと自分に言い聞かせる。
葵と2人でこのカラスと戦っても勝てる可能性は低いだろう。
ならば、今僕に出来ることはなんだ?
僕は自分に問いかける。
僕は葵を横目で見る。
葵は顔を青くし、体を震わしている。
やはり怖いのだろう。
その姿を見て、僕はすぐに答えを出すことができた。
今、僕が出来ることは葵を逃がすことだろう。
「葵、早く逃げて!」
僕は葵に早く逃げるように促す。
「えっ...?でも、優は?」
葵は明らかに困惑した様子だ。
どうすればいいのか分からないのだろう。
こうなってしまえば葵を先に逃がすことは難しい。
ならばーー
「こっちに来いデカブツ!」
僕がカラスを引き付けて、無理やり葵から距離を離せばいい。
箒をカラスに投げつける。
見事に当たりカラスの注意を引くことができた。
僕に出せる全速力の走りで教室の扉を開け、廊下を走る。
カラスも僕を追いかけるためにドアに強くぶつかりドアを吹き飛ばした。
── 怖い
恐怖が僕の心を支配していく。
もっと早く走れ。と、
自分自身に暗示をかけるように何度も復唱する。
これで走るのが早くなればいいのだが、既に全速力に近い状況でそんなことは不可能に等しい。
カラスが着々と僕との距離を縮めてくる。
── どうすればいい。
どうすれば今の状況を挽回することができる。
ただひたすらに僕は自問自答を繰り返す。
能力。という言葉が一瞬頭をよぎる。
── 能力を、使うべきか...?
いや、でも、僕の能力は危険が多すぎる。
ならばどうすれば...
「キエエエエエエエェェ」
再びカラスが雄叫びに近い叫びをあげる。
もっと深くまで考えたいのだが、生憎カラスはそれを許してはくれない。
踊り場へと出る曲がり角を僕は曲がる。
急カーブのせいか、滑りそうになった。
そして、その隙もカラスは見逃さなかった。
一瞬のその隙を狙って更にカラスは距離を縮めてきたのだ。
「あぁ、もう!どうにでもなれ!」
流石に僕もまずいと判断し、能力を使おうと決断した。
手をカラスの方に向け、いざ放とうと思った時。
「伏せて!!」
そんな、心にまで浸透するような綺麗な声が後ろから聞こえた。
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